はじめに
2026年10月18日、出入国在留管理庁が「高度専門職」の最低年収要件の引き上げ方針を固めたと報じられました。これは、高度専門職として永住を目指している方、または技術・人文知識・国際業務(技人国)のままポイント計算を利用して永住申請を考えている方にとって、重要なニュースです。
この記事では、今回の改正が永住申請にどのように影響するのか、そして改正前に何をすべきかをご説明いたします。
1. 2026年10月18日の報道で分かったこと
時事通信などの報道によると、出入国在留管理庁は高度専門職の最低年収要件を現行の「300万円以上」から引き上げる方針を固め、2027年3月末までの今年度内に省令改正を目指しています。
現行制度では、「技術」と「経営・管理」分野に最低年収300万円という基準が設けられています。ポイントが70点を超えていても、年収がこの基準に満たない場合、申請は受理されません。「研究」分野には最低基準がありません。
ただし、以下の点は現時点で公表されていません。
- 新しい最低年収の金額
- 施行日
- 現在の在留者や申請中の人に対する経過措置
今回の改正は法律ではなく省令の変更で行われるため、国会での長い審議は不要です。2026年8月に入管から公表されたガイドライン改定のように、今回も公表から施行までの期間が短くなる可能性があります。
2. なぜ今、厳格化されるのか
現行のポイント表は2015年に作成されて以来、10年以上見直されていません。この間、最低賃金や物価が上昇し、「年収300万円」という基準が高度人材を選定する目安として実態にそぐわなくなってきました。
もう一つの背景には、政府の「量から質へ」という方針があります。建設や介護といった人手不足分野では外国人の受け入れを拡大する一方で、永住への近道とされる高度専門職については、高収入で貢献度の高い人材に限定する狙いがあります。外国の資格や研究実績など、審査に時間を要する加点項目が整理され、年収や年齢といった点数化しやすい項目が中心となる可能性も指摘されています。
3. 【高度専門職1号ビザの方】永住申請の特例は残る見込みだが、基準は厳しくなる
永住許可申請は通常、在留10年が目安ですが、高度専門職には特例があります。ポイントが80点以上であれば1年、70点以上であれば3年で申請可能です。今回の厳格化は「認定基準」の見直しであり、この特例は維持される見込みです。特別高度人材(J-Skip)も同様に維持される見通しです。
しかし、「特例が残るから安心」とは言い切れません。永住申請の時点で、新しいポイント計算表の80点または70点を維持している必要があるからです。年収基準が高くなれば、現行の点数をそのまま維持できなくなる方も出てくるでしょう。
次の場面でも新基準が適用されると考えられます。
- 更新: 5年の在留期間は保持されますが、満了後の更新は新ポイント計算表で審査されます。基準に届かない場合、技人国などへの在留資格変更となり、親の帯同や配偶者のフルタイム就労といった優遇も失います。
- 転職: 高度専門職1号ロは所属機関に紐づくため、転職のたびに変更申請が必要です。新基準の施行後は、転職先での年収も新ポイントに基づき計算されます。
- 高度専門職2号への移行: 3年以上活動すると高度専門職2号に移行でき、在留期間は無期限になります。永住申請と並行して検討する価値があります。
4. 【技人国ビザでポイント計算を使う方】大きく影響を受けやすい
高度専門職の在留資格に変更しなくても、技術・人文知識・国際業務の在留資格のままで、ポイント計算で80点以上を1年間、または70点以上を3年間維持していれば永住申請は可能です。この「みなし高度専門職」のルートが、今回の改正で最も影響を受けると見られています。
理由は、新ポイント計算表が公表された後、1年前または3年前のポイントも新基準で計算し直される可能性が高いからです。現行基準で80点や70点ある方でも、新基準ではポイントが届かなくなるケースが出てくるでしょう。法務省から経過措置は発表されておらず、近年は改定が突然行われ、過去分も新基準で再計算される例が通例とみられます。猶予があると期待するのは危険です。
5. 最低年収はいくらになるか?
新しい金額は未公表です。しかし、2026年10月に当事務所が東京入管横浜支局で年収400万円(独身)の方の永住申請について相談した際、職員から「年収400万円では若干不足」との説明を受けました。この点と民間給与実態統計調査から、当事務所では、今後の永住申請では単身者で450万円から500万円程度の年収が必要になるのではないかと考えています。
この変更は、年収が300万円台の職歴の浅い方や、比較的昇給率の低い中小企業に勤務する方々に大きく影響します。ポイントは80点や70点を満たしているにもかかわらず、年収基準を満たせないという事態が十分に考えられます。
6. 省令改正までに始めたい3つの準備
1) 現在のポイントを正確に計算する。
現行基準で80点または70点以上ある場合は、早めに高度専門職1号ロへの変更を検討してください。現在の基準で評価され、5年間の在留期間が確保できます。
2) 加点できる項目を探す。
例えば、日本語能力試験N1は現在15点と配点が大きく、N2からN1を取得することで5ポイント増えます。
また、”基本情報技術者試験”や”情報セキュリティマネジメント試験”などのIT関連国家資格も加点につながりやすいです。
3) 専門家に相談する。
自分では加点にならないと思っていた項目が、実は点数になることがあります。例えば、所属企業の条件(中小企業の要件、研究費の支出など)によって加点されるケースです。
7. こんな方は、早めにご相談ください
- ・技術・人文知識・国際業務ビザをお持ちで、ポイント計算による永住申請をご検討中の方。
- ・高度専門職1号ビザをお持ちで、来年更新や転職の時期を迎える方。
- ・来日1年で、ポイント計算による永住申請をご検討中の方。
- ・ご自身の点数が現行基準と新基準でどう変わるのかを知りたい方。
- ・永住申請と高度専門職2号ビザのどちらがご自身に適しているか迷っている方。
当事務所では、現行基準と改正後の見通しの両方でポイントを試算し、適切な申請時期や方法をご提案しています。まずは現在の状況をお聞かせください。
まとめ
高度専門職の最低年収要件(現行300万円以上)が引き上げられる見込みです。永住申請における主な変更点は以下の3つです。
- 高度専門職1号: 1年・3年の特例は残ります。
- ポイント計算: 1年前や3年前の点数も、新基準を満たしている必要があります。
- 年収の目安: 当事務所では、単身者の場合、年収450万円〜500万円程度が必要になると考えています。
省令改正は今年度内の見込みです。現在、点数を満たしている方は、早めに高度専門職への変更をご検討ください。永住申請のポイント計算については、当事務所までお気軽にご相談ください。
※本記事は2026年10月18日時点の報道と当事務所の見解に基づいています。金額や施行時期は変更される可能性がありますので、最新情報は法務省・出入国在留管理庁の発表をご確認ください。
この記事の執筆・監修者
行政書士 藤澤 信
特定行政書士・申請取次行政書士
日本行政書士会連合会所属
登録番号:第22091831号
本記事は、永住権申請を専門とする行政書士が、最新の法令・審査運用および実務経験に基づいて執筆・監修しています。
