永住許可申請と海外送金:国外扶養親族・扶養控除・生計要件の審査ポイント
1. 永住許可申請で海外送金が注目される理由
永住許可申請では、申請者が日本で安定した生活を維持できるかどうか、いわゆる「生計要件」が最も重視されます。
そのため、海外に住む家族への仕送り(海外送金)を行っている場合、その送金が申請者の生活にどのような影響を与えているのか、また送金の必要性がどの程度なのかを入国管理局は慎重に確認します。
海外送金そのものは永住ビザの不許可理由にはなりませんが、日本での生活が不安定になるような過度な送金は、永住許可の審査に影響を与える可能性があります。
2. 扶養の実態を示すために必要な「理由」と「継続性」
送金が扶養として認められるためには、送金の理由が明確であることが求められます。
たとえば、親が高齢で働けない、または病気で収入がないといった事情がある場合、生活費の援助としての送金は自然なものと判断されます。
また、送金は一度きりではなく、毎月または数か月ごとに継続して行われることが重要です。
入管は「扶養の実態」を確認するため、送金の頻度や金額の変動も慎重に見るため、年末にまとめて大金を送るような不自然なパターンは、生活費としての実態が疑われることがあります。
3. 送金額・証拠書類・税務上の扱い
送金額に法律上の下限はありませんが、多くの場合、年間38万円以上(月3万円程度)が扶養の実態として判断されやすい金額とされています。
これは税務署が国外扶養控除を認める際の基準とも一致します。
ただし、生活費が少なくて済む国や学生の場合は、より少額であっても合理的な説明をすることで認められる可能性があります。
送金の証拠としては、銀行の海外送金明細やオンライン送金サービス(Wise、Revolut、Alipay、Remitlyなど)の履歴が必要です。
これらの証拠が明確であれば、永住許可申請の審査はスムーズに進みます。
また、国外扶養控除を受けるためには、親族関係書類(出生証明書・家族関係証明書)と送金記録を会社に提出する必要があり、英語以外の外国語の書類の場合には和訳も必要です。
4. 扶養者がいる場合の年収基準
海外の家族を扶養していること自体は永住申請で問題視されることはありません。
しかし、申請人が日本での生活を維持しながら扶養を続けられるだけの収入があるかどうかは慎重に判断されます。
永住許可の実務では、単身者であれば年収300万円程度が目安とされ、扶養者が1人増えるごとに70〜80万円必要と考えられています。
海外の親族であっても、この計算に含まれます。
たとえば母国の両親と兄弟2人の合計4人を扶養している場合、それだけで年収は580万円前後が目安になります。
国内に配偶者や子どもがいる場合は、別途、1人増えるごとに70〜80万円が必要です。
当事務所の経験では、年収が高い人ほど扶養者を増やして税負担を軽くしようとする傾向があるように感じます。
また、当事務所の実績ではインドを含むアジア圏でこの傾向が高いです。
5. 税務署と入国管理局の判断基準の違い
注意すべき点は、税務署と入国管理局では扶養控除の判断基準が異なるということです。
税務署は控除の要件を満たしていれば扶養控除を認めますが、入国管理局は独立生計要件の観点からも確認を行います。
具体的には、入国管理局は次のような点を確認します。
- 送金の実態があるか
- 送金の理由が合理的か
- 送金が継続的に行われているか
- 生活費として妥当な金額か
- 証拠書類(送金明細、親族関係書類)が揃っているか
また、申請人の素行に関する評価も行われるため、送金の実態がないのに扶養控除だけを申告していると、税金を不当に減らそうとしたと判断され、永住許可の不許可リスクが高まります。
6. 永住申請で不利にならないための送金と扶養のポイント
永住許可申請で不利にならないためには、扶養の前提条件を満たしているかを確認し、扶養される側の所得が48万円以下であること、親族関係が法律上認められる範囲であることを証明する必要があります。
送金は扶養者ごとに個別に行い、まとめて送金して分配する方法は認められません。
生活費としての実態を示すためには、定期的に送金し、その記録を管理することが重要です。
また、過去の申告に誤りがあり修正申告を行った場合、その事実が永住審査に不利に働くことがあります。
永住許可申請では直近5年分の納税記録が審査されるため、修正申告をした年度がこの範囲に含まれていると、過去の誤りがそのまま審査対象になります。
当事務所では、修正した年度が提出書類の範囲から外れるまで待つことをお勧めしています。
7. まとめ
永住許可申請では、日本で安定した生活を維持できるかという「生計要件」が重視されます。
海外送金がある場合、入国管理局は生活が圧迫されていないかを確認します。
海外送金自体は永住ビザの不許可理由にはなりませんが、素行善良要件の観点からは、扶養の実態を示すために送金理由が明確であり、毎月または定期的に継続していることが重要です。
送金額に法律上の下限はありませんが、実務上は年間38万円以上が国外扶養親族の扶養控除として認められやすい基準とされています。
審査では、送金明細や親族関係書類などの証拠が必要で、送金の実態がない扶養控除は不許可リスクにつながります。
また、修正申告がある場合は永住審査に影響するため、正確な記録管理と誠実な納税が永住許可取得の鍵となります。
