10年待たずに永住権を取得する方法:
みなし高度人材制度で家族全員の安定を実現
事例概要
インド国籍のKさん(40歳)は、8年間の日本滞在経験を持つソフトウェアエンジニアです。一般的に必要とされる「10年以上の在留期間」を待つことなく、みなし高度人材制度を活用して家族全員(妻と2人の子ども)の永住権取得に成功しました。
本コラムでは、通常の永住許可申請を最大9年も短縮できる「みなし高度人材制度」の概要、家族全員での申請ポイント、そして成功事例を詳しく解説します。
相談者プロフィール
Kさん一家の基本情報
本人 | 39歳、インド国籍、ソフトウェアエンジニア |
---|---|
在留資格 | 技術・人文知識・国際業務 |
日本滞在期間 | 8年 |
年収 | 860万円 |
家族構成 | 妻(38歳、インド国籍、家族滞在の在留資格) 息子(10歳、インド国籍、小学生) 娘(5歳、インド国籍、幼稚園児) |
日本語能力 | 日常会話レベル |
相談のきっかけ
Kさん一家は日本での生活に馴染み、長期的に日本に住むことを希望していました。通常の永住権申請には10年以上の滞在が必要と聞いていましたが、できれば早期に家族全員の永住権を取得したいと考えていました。知人の紹介で当事務所を訪れ、10年を待たずに永住権取得が可能かどうか、また家族全員での申請が可能かどうかを相談しました。
みなし高度人材制度とは
制度の概要
「みなし高度人材制度」は、法務省の「永住許可に関するガイドライン」に基づき、高度な技能や専門知識を持つ外国人に対して、通常の永住権申請の要件(10年以上の在留期間)を緩和する制度です。つまり、高度専門職の在留資格でなく、例えば技術・人文知識・国際業務の在留資格であっても、高度専門職のポイント計算表、ポイントをクリアできれば、在留期間の要件が緩和されるというものです。
※実際には「みなし高度人材」という正式名称ではなく、高度専門職におけるポイント制による優遇措置ですが、便宜上「みなし高度人材制度」と呼んでいます。
通常の永住権申請との比較
申請区分 | 必要在留期間 | その他の要件 |
---|---|---|
通常の永住申請 | 原則10年以上 | 素行要件、生計要件、 公益性など |
みなし高度人材(70点以上) | 3年以上 | 素行要件、生計要件、 公益性など |
みなし高度人材(80点以上) | 1年以上 | 素行要件、生計要件、 公益性など |
みなし高度人材制度のメリット
1.永住権取得までの期間短縮
10年→3年(70点以上)または1年(80点以上)
2.在留資格変更不要
「高度専門職」への変更申請をせずに、現在の在留資格のまま永住申請可能
3.家族全員での申請
配偶者や子どもも同時に永住権申請が可能
みなし高度人材ポイント計算方法
ポイント計算の仕組み
ポイントは以下の項目で評価されます:
1.学歴 (最大30点)
・博士号取得:30点
・修士号取得:20点
・学士号取得:10点
2.職歴 (最大25点)
・10年以上:20点
・7年以上10年未満:15点
・5年以上7年未満:10点
・3年以上5年未満:5点
3.年収 (最大50点)
・1,000万円以上:40点
・900万円以上1,000万円未満:35点
・800万円以上900万円未満:30点
・700万円以上800万円未満:25点
・600万円以上700万円未満:20点
・500万円以上600万円未満:15点
・400万円以上500万円未満:10点
※年齢による制限あり
4.年齢 (最大15点)
・30歳未満:15点
・30歳以上35歳未満:10点
・35歳以上40歳未満:5点
5.特別加算項目
・特許取得、学術論文掲載、日本語能力など
Kさんのポイント計算例
Kさんは以下のようにポイントを獲得し、合計80点となりました:
・学歴: 修士号(コンピュータサイエンス)(20点)
・職歴: 8年の実務経験(15点)
・年収: 860万円(30点)
・年齢: 39歳(5点)
・特別加算:日本語能力(N2相当)(10点)
・合計: 80点
ポイント計算表に基づき、Kさんは70点以上を獲得していることが確認できました。これにより、8年の在留期間で永住権申請が可能となりました。
家族全員での永住権申請
家族での永住権申請の基本条件
一般的に、永住権申請は個人単位で行いますが、以下の条件を満たす場合、家族全員での同時申請が可能です:
1.扶養者(世帯主)が永住要件を満たしていること
・みなし高度人材(70点以上)の場合、3年以上の在留
・みなし高度人材(80点以上)では、家族の永住許可申請はできません
2.家族の在留資格と期間
・配偶者・子どもが「家族滞在」または「日本人の配偶者等」などの適格な在留資格を持っていること
・家族も原則として1年以上の日本滞在があること
3.世帯としての生計要件
・家族全員の生活を支えるのに十分な収入があること
・4人家族の場合、一般的に年収510万円以上が目安
4.素行要件
・家族全員が素行善良で、法令違反がないこと
・税金、社会保険料等の支払いが適切になされていること
家族申請のメリット
1.家族全員の安定した生活基盤
全員が永住権を持つことで、在留期間更新の負担がなくなる
2.子どもの教育計画の安定
長期的な教育計画が立てやすくなる
3.社会保障の充実
永住者として各種社会保障サービスを受けられる
4.家族での将来設計
日本での長期的な生活設計が可能になる
家族申請時の特有の注意点
1.子どもの申請書と代理人署名
・未成年の子どもの申請書には、法定代理人(通常は親)の署名が必要
・両親がいる場合は、どちらかの署名で可能
2.身分関係証明書類
・婚姻証明書(配偶者の場合)
・出生証明書(子どもの場合)
・外国語の証明書は翻訳が必要(英語は翻訳不要の場合あり)
3.世帯単位での経済力証明
・家族人数に応じた十分な収入の証明
・扶養能力の証明(課税証明書、納税証明書など)
必要な書類と準備
申請者本人(Kさん)の必要書類
1.永住許可申請書
・所定の様式に記入(オンラインでダウンロード可能)
・写真添付(縦4cm×横3cm、6ヶ月以内撮影のもの)
2.理由書
・永住を希望する具体的理由
・日本社会への貢献や今後の計画
・家族での永住希望理由も含める
3.身分関係証明書類
・パスポートのコピー
・在留カードのコピー
・住民票(世帯全員のもの)
4.経済力証明書類
・課税証明書(過去5年分)
・納税証明書(過去5年分)
・源泉徴収票(過去5年分)
・在職証明書
・所得税の課税証明書(その3)
5.社会保険関連書類
・ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
・健康保険証のコピーまたは健康保険料納付証明書
6.その他の証明書類
・身元保証書および身元保証人の運転免許証のコピー
・了解書
・セルフチェックシート
・高度人材ポイント計算表
・卒業証書
・職歴証明書(転職がある場合)
・特許を取得している場合は特許証のコピー
・国家資格を取得している場合はその国家資格証のコピー
・日本語能力試験N1,N2等に合格していればその合格証のコピー
・その他特別加算に該当する場合はその証明資料のコピー
・運転経歴証明書および運転免許証のコピー
・年収見込証明書
家族(妻・子ども)の必要書類
・永住許可申請書(妻と子ども)
・妻の納税証明書
・妻の所得税の課税証明書(その3)
・妻のねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
・妻と子どもの健康保険証のコピー
・妻と子どものパスポート
・妻と子どもの在留カード
・婚姻証明書のコピー
・出生証明書のコピー
・子どもの学校在籍証明書
・身元保証書(家族分)
身元保証人の準備書類
1.身元保証書
・申請者全員分(Kさんと家族3名、計4名分)
・同一の保証人でも可能
2.身元保証人の証明書類
・身元保証人の運転免許証のコピー
書類準備の注意点
1.外国語書類の取り扱い
・英語の書類は原則として翻訳不要
・英語以外の言語の場合は日本語訳を添付
2.証明書の有効期限
・役所から発行された書類は、発行から3ヶ月以内のものに限られます
3.書類の正確性
・名前のスペルや生年月日等に誤りがないか確認
・パスポートや在留カードの表記と一致していることを確認
申請から許可までのタイムライン
Kさん一家のケースにおける申請プロセスを時系列で紹介します。
詳細タイムライン
1.初回相談(1日)
・みなし高度人材制度の可能性を検討
・家族全員での申請可能性を確認
2.ポイント計算と確認(2週間〜5週間)
・高度人材ポイント計算表に基づくポイント算出
・70点以上であることを確認
・必要書類のリストアップ
3.書類収集・準備期間(6週間〜14週間)
・申請書類への記入
・本人と家族の必要書類の収集
・理由書の作成
・身元保証人への依頼
4.年金・健康保険料支払い状況の確認(〜14週間)
・直近2年分のねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
・健康保険証のコピー
5.申請書類提出(15週目)
・入国管理局への申請書類提出(家族全員分)
・申請受理と審査開始
6.審査期間(15週目〜63週)
・書類審査(約12ヶ月)
・必要に応じて追加資料の提出
7.許可通知(64週)
・永住許可の通知(家族全員)
・「永住者」在留カードの受け取り
みなし高度人材申請の平均審査期間
申請タイプ | 平均審査期間 |
---|---|
みなし高度人材(80点以上) | 5〜18ヶ月 |
みなし高度人材(70点以上) | 5〜18ヶ月 |
技術・人文知識・国際業務などの就労ビザ | 6〜18ヶ月 |
成功のポイント
Kさん一家のケースから、みなし高度人材制度を活用した家族全員の永住権申請を成功させるポイントをまとめました。
Kさん一家の申請成功要因
1.みなし高度人材要件の的確な判断
・高度人材ポイント計算表による正確なポイント算出
・特に日本語能力などの特別加算項目の有効活用
2.家族全員の申請準備の丁寧な対応
・子どもの申請書への法定代理人としての適切な署名
・家族全員の理由書への記載
・家族関係を証明する書類の適切な準備
3.経済力の十分な証明
・4人家族の生活を支えるのに十分な年収(860万円)の証明
・過去5年間の安定した収入の証明(課税証明書、納税証明書)
4.社会保険料支払い課題への適切な対応
・Kさんと配偶者の直近2年分のねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
・家族全員の健康保険証のコピー
専門家が考えるみなし高度人材申請の成功ポイント
当事務所の経験から、みなし高度人材制度を活用した永住権申請の成功率を高めるには以下の点が重要です:
1.ポイント計算の正確さと証拠の充実
・各項目のポイントを裏付ける客観的証拠の提示する
・特別加算項目を積極的に活用する
2.家族申請の一貫性と完全性
・家族全員の申請書類の整合性を確保する(過去の申請内容とも矛盾がないように)
・夫婦や親子関係の証明を行う
3.経済的安定性の強調
・家族規模に応じた十分な収入があることを証明する
4.社会統合の証明
・日本社会に適応していることを証明する
・地域社会との関わりが深いことや貢献をしていることを証明する
5.日本社会への貢献度のアピールと将来設計
・より一層日本社会へ貢献したい旨を表明する
・日本での長期的な生活設計を明示する
よくある質問
Q1
みなし高度人材制度と高度専門職(高度人材)の違いは何ですか?
Q2
みなし高度人材として永住権申請する際の最低在留期間は何年ですか?
Q3
家族も同時に永住権を申請できますか?
Q4
みなし高度人材の70点を獲得するコツはありますか?
Q5
健康保険料の支払いが遅れたことがある場合、永住権申請はできますか?
Q6
外国語の証明書(婚姻証明書や出生証明書)は翻訳が必要ですか?
Q7
みなし高度人材による永住権申請の審査期間はどのくらいですか?
Q8
永住権申請が不許可になった場合、再申請は可能ですか?
まとめ
Kさん一家の事例は、みなし高度人材制度を活用することで、通常10年かかる永住権取得を8年に短縮し、かつ家族全員での永住権取得に成功した事例です。ソフトウェアエンジニアとしての専門性、日本語能力、そして安定した収入と生活基盤が評価され、4人家族全員が同時に永住権を取得することができました。
永住権早期取得のカギ
1.みなし高度人材制度の活用
高度人材ポイント70点以上の獲得による在留期間短縮
2.特別加算項目の最大活用
日本語能力や職務での日本語使用などの付加価値の証明
3.家族全員での一貫した申請準備
家族それぞれの状況に応じた適切な書類準備と申請
4.経済的安定性の証明
家族全員を養うのに十分な収入と将来的な安定性の証明
5.社会統合度の証明
日本社会への適応と貢献意欲の明確な表明
Kさんの言葉
― 「家族全員で永住権を取得できるとは夢のようです。子供たちの将来を考えると、これほど心強いことはありません。日本で、家族みんなでより良い未来を築いていけることを楽しみにしています。」
この言葉にあるように、家族全員での永住権取得は、特に子どもの教育や将来設計において大きな安心感をもたらします。みなし高度人材制度を活用することで、家族全体の将来の安定性を早期に確保できることが、この制度の最大のメリットと言えるでしょう。
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