申請不許可からの永住権取得:再挑戦で成功した実例と対策
事例概要
中国国籍のDさん(40歳)は、一度目の永住権申請が不許可となったものの、諦めずに課題を克服し、2回目の申請で永住権を取得することに成功しました。「不許可は終わりではなく、次の成功への準備」という事例です。
本コラムでは、永住権申請が不許可となった方に向けて、再申請成功事例をもとに、不許可の原因分析から再申請の準備、そして申請成功までのプロセスを詳しく解説します。
相談者プロフィール
Dさんの基本情報
年齢・国籍 | 40歳、中国国籍 |
---|---|
在留資格 | 技術・人文知識・国際業務 |
日本滞在期間 | 12年 |
職業 | 個人経営の輸入会社の営業職 |
家族構成 | 家族滞在の配偶者(中国国籍)、子ども1人(中国国籍、日本の学校に通学中) |
日本語能力 | 日常会話レベル |
背景
Dさんは12年前に家族とともに来日し、技術・人文知識・国際業務の在留資格で日本に滞在していました。友人の輸入会社の営業職として11年間勤務し、友人や入居者からの信頼も厚く、日本での生活基盤をしっかりと築いていました。子どもたちも日本の教育を受け、家族全員が日本社会になじんでいたため、永住権の取得を強く希望していました。
一度目の申請と不許可の理由
一度目の申請状況
Dさんは日本滞在10年目に初めて永住権申請を行いましたが、申請から8ヶ月後に不許可通知を受け取りました。
不許可の理由
1.安定した収入の証明不足
・申請直近5年間のうち、継続して年収要件を満たしていない期間がありました。
・実際に申請の5年前の年収は350万円で、基準を下回っていた。2年目以降は450万円を超えていました。
・年収440万円程度が必要であったが、Dさんは自身の年収が300万円を超えていたため、要件を満たしていると思っていました。
2.社会保険料(年金)の未納期間
・申請前の1年半の間に年金保険料の未納がありました
・社会保険料の納付状況が永住権審査の重要項目であることを認識していませんでした
Dさんは不許可通知を受け取った際、大きなショックを受けましたが、日本に永住したいという強い思いから、対策を講じて再申請することを決意しました。
永住権申請の基本要件
永住許可申請には、法務省の「永住許可に関するガイドライン」に基づき、当事務所では以下の基本的な要件があると考えております。
基本要件
1.素行要件
・犯罪歴がないこと
・税金や社会保険料を適正に納付していること
2.生計要件
・安定した収入があり、継続的な就労が見込めること
・一般的に年収300万円以上が目安とされる
・扶養家族がいる場合、それに応じた収入が必要です。一般的には、家族が1人増えるごとに約70万円の収入が必要と言われています。
3.在留期間要件
原則として「10年以上の在留期間」
例外:日本人・永住者の配偶者は「3年以上の婚姻かつ1年以上の日本在留」
例外:定住者や日本人の子は「5年以上の在留」
例外:高度専門職の場合は「1年または3年の在留」
4.その他の要件
・日本社会に貢献する意欲と能力があること
・公共の負担となるおそれがないこと
不許可となる主な理由
永住権申請が不許可となる主な理由を紹介します。
不許可となる主な理由
不許可理由 | 概要 |
---|---|
収入不足 | 申請者または世帯の収入が安定して300万円以上ない |
税金・社会保険料の未納 | 年金や健康保険料の未納があったり、支払い遅延がある |
在留期間不足 | 必要な在留期間(通常10年)に達していない |
素行不良 | 交通違反がある |
素行不良 | 出国違反がある |
書類不備 | 必要書類の不足や記載ミスがある |
その他 | 虚偽の申請等 |
不許可後の再申請について
永住権申請が不許可となった場合、法的には即時に再申請することも可能です。しかし、不許可理由を解消せずに再申請しても、再び不許可となる可能性が高いため、以下の点に注意が必要です:
1.不許可理由の明確な把握
不許可後、入国管理局を訪問し、不許可通知の内容を正確に理解します
2.十分な準備期間の確保
不許可理由となった課題を解消するための期間を設けます
準備期間は不許可の原因によって異なる。数ヶ月後に再申請が可能な場合もありますが、例えば無免許運転をした場合は、10年間の準備期間が必要となります。
3.専門家への相談
再申請にあたっては、行政書士などの専門家に相談し、分析と対応策を策定することをおすすめします。
再申請に向けた対策と準備
Dさんのケースでは、以下の対策と準備を行いました。
収入要件への対応
1.年収の安定化計画
施策案
・現在の職場での昇給交渉
・通関士の資格取得による給与アップ
・必要に応じた副業の検討
実行計画
過去5年間のうち、初年度は年収要件を満たしていなかったため、次年度からの5年間にわたり、年収要件を満たすための施策を講じました。2年目以降は年収が450万円を超えていたため、直近の1年間も450万円を超えるよう、残業を考慮しながら毎月注意を払って働きました。
社会保険料(年金)納付への対応
1.未納分の確認と対応
・年金事務所で未納期間を確認しました
2.今後の確実な納付体制
・口座振替による自動引き落としを設定しました
・納付状況を定期的に確認しました
追加的な対策
1.地域社会への貢献アピール
・地域のボランティア活動に参加するようにしました
・子どものPTA活動や町内会の活動にも積極的に関与するようにしました
2.理由書の充実
・前回の不許可理由への対応状況を詳細に記載しました
・日本社会への貢献を具体的に記載しました
申請から許可までのタイムライン
Dさんのケースにおける不許可から再申請、許可までの流れを時系列で紹介します。
詳細タイムライン
1.不許可通知受領(1日)
・入国管理局から不許可通知を受け取る
2.対策検討・再申請準備(11ヶ月)
・不許可理由の分析
・入国管理局へのヒアリング
・再申請に向けた戦略立案
・収入安定化への取り組み
・地域活動への参加
・年収状況の確認(目標:450万円)
・年金保険料納付状況の確認
・必要書類の収集
・理由書の作成
・添付資料の整理
3.再申請(1日)
・入国管理局への申請書類提出
・申請受理
4.審査期間(9ヶ月と2日)
・書類審査
・結果通知の待機
5.許可通知(1日)
・永住許可の通知
・「永住者」在留カードの受け取り
「定住者ビザ」を持つ方の一般的な再申請の期間
申請タイプ | 不許可理由 | 推奨準備期間 |
---|---|---|
再申請(収入不足) | 年収300万円未満 | 最大5年 |
再申請(年金未納) | 年金の未納または支払い遅延 | 最大2年 |
再申請(健康保険料未納) | 健康保険料の未納または支払い遅延 | 最大2年 |
再申請成功のポイント
Dさんの事例から、再申請を成功させるポイントをまとめました。
Dさんの再申請成功要因
1.不許可理由の正確な把握と対策
・不許可通知の内容を正確に理解し、専門家に相談した
・収入要件と年金納付という2つの課題に焦点を絞った対策を講じた
2.収入の安定化と証明
・5年間の年収440万円を目標に設定し、達成した
3.年金保険料の確実な納付
・自動引き落としによる確実な納付を実行した
4.理由書の充実
・前回の不許可理由に対する具体的な対応策を詳述した
・日本社会への貢献意欲と永住希望の理由を具体的に説明した
専門家が考える再申請成功の一般的ポイント
当事務所の経験から、永住権再申請を成功させる一般的なポイントは以下の通りです:
1.十分な準備期間の確保
・不許可理由に応じた適切な準備期間を設ける
・急ぎすぎず、条件を確実に満たしてから再申請する
2.不許可理由の根本的解決
・表面的な対応ではなく、根本的な問題解決を図る
・再申請時に「前回と何が変わったか」を明確に示せるようにする
3.証拠資料の充実
・改善状況を客観的に証明できる資料を用意する
・必要に応じて第三者からの証明書や推薦状を取得する
4.理由書の説得力
・前回の不許可理由を克服したことを具体的に明記する
・日本社会への貢献や永住希望の理由を誠実に伝える
5.専門家のサポート
・行政書士などの専門家のアドバイスを受ける
・申請書類の作成や面接対策で専門的サポートを受ける
よくある質問
Q1
永住権申請が不許可になった場合、どのくらい待ってから再申請できますか?
Q2
不許可通知に記載されていない理由で再び不許可になることはありますか?
Q3
収入要件を満たすために副業をしてもよいですか?
Q4
社会保険料の未納がある場合、過去に遡って納付する必要がありますか?
Q5
不許可から再申請までの間に在留期間が切れる場合はどうすればよいですか?
Q6
再申請時に前回と同じ書類を使用できますか?
Q7
再申請の許可率はどのくらいですか?
Q8
不許可になった場合、行政書士に依頼するメリットは何ですか?
まとめ:諦めないことの大切さ
Dさんの事例は、永住許可申請が一度不許可になっても、適切な対策と準備により再挑戦が実を結ぶ可能性を示しています。
再申請成功のカギ
1.正確な問題把握
不許可理由を正確に理解する
2.具体的な対策
問題を解決するための具体的な行動計画を立てる
3.十分な準備期間
条件を確実に満たすための時間を確保する
4.専門家のサポート
行政書士など専門家の知識とサポートを活用する
5.諦めない心
最も重要なのは、困難を乗り越える意志と諦めない心
Dさんの言葉
― 「藤澤さん、本当にありがとうございます。一度はあきらめかけましたが、時間は要しましたが、あきらめずに頑張って本当に良かったです。これからは日本社会にもっと貢献していきたいです。この経験を活かして、同じような立場の人たちの希望になれたらと思います。」
この言葉にあるように、永住権取得への道は時に困難を伴いますが、適切な対策と諦めない気持ちがあれば、夢を実現することができます。
当事務所のサポート
当事務所では、永住権申請が不許可となった方々に対して、以下のサポートを提供しています:
1.不許可理由の詳細分析
2.再申請に向けた具体的な対策プラン作成
3.必要書類の収集と作成サポート
4.説得力のある理由書の作成
5.再申請手続きの総合的なサポート
無料相談のご案内
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