永住申請における「在留期間の空白」とは、就労や居住などに基づく継続的な在留が中断された状態を指します。この空白があると、在留期間がリセットされ、再び必要な年数を積み直さなければならない場合があります。
このコラムでは、空白が発生する原因とその影響、さらに空白がある場合の対応策について解説します。
空白期間が問題となるケース
1.就労しないことによる空白
技術・人文知識・国際業務などの就労資格で在留している場合、失業や転職活動、休職などにより1年以上就労していない期間が発生した場合、この期間は永住申請における就労実績としてカウントされません。そのため、再び職に就いた後、改めて5年以上継続して就労する必要がある可能性があります。
また、連続して3か月以上、保有している在留資格に基づく活動を行っていない場合には、在留資格が取り消される可能性があります。正当な理由なく3か月以上無職であると、在留資格そのものが取り消されるおそれがあります。
転職のために一時的に離職した場合でも、3か月以内に新たな就職先を見つけることが望ましく、そうでないと就労資格が失われる可能性があります。
ただし、就労できなかった理由が病気、交通事故、家族の看病、出産育児などの合理的な場合には、例外として取り消しとならないこともあります。
2.居住の空白
「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった居住資格で在留している場合でも、長期間にわたって日本を離れると、継続的な在留とは見なされず、空白期間として扱われる可能性があります。具体的には、「1回の出国が3か月以上である場合」や「1年間で合計100日以上日本を離れている場合」が該当します。
このような場合、「居住」の実態が乏しいと判断される可能性があり、これまでの在留期間がリセットされ、再度5年以上の継続的な在留が求められることがあります。
空白期間が問題にならない場合
1.不可抗力の場合
空白期間が問題とされない場合もあります。たとえば、コロナ禍などの不可抗力により、予定どおりに日本へ戻れなかった場合、出国期間が長期にわたっても「継続的な在留がある」と判断される可能性があります。また、病気やケガにより一時的に就労が困難となった場合も同様です。
このような場合には、医師の診断書や治療記録などの客観的な証拠を提出することで、やむを得ない事情として認められる可能性が高くなります。
つまり、単に「無職である」こと自体が問題なのではなく、「働けない理由」が合理的であり、それを裏付ける証拠があるかどうかが審査における重要なポイントとなります。
空白期間が生じてしまった場合の対応策
1.在留資格の変更・更新の可能性の模索
就労資格を喪失した場合には、速やかに別の在留資格への変更を検討する必要があります。特に無職の期間が長引いた場合、その理由をきちんと説明できなければ、在留資格の変更申請や更新申請が不許可となるおそれがあります。
2.無職期間における具体的な対処法
無職期間が発生した場合には、以下の具体的な方法で状況を補足・説明することが重要です:
①在留資格の変更や更新の際、理由書で無職期間が長くなった理由を説明する必要があります。
②空白期間が3か月以上続いた後に就職した場合で、在留期限までに余裕がある場合には、「就労資格証明書」の取得をお勧めします。
3.証拠書類の整備
空白期間であっても就労の努力をしていたことを裏付ける証拠書類を準備することは非常に重要です。
例)
・ハローワークでの職業訓練のための職業相談・受講申込書のコピー、求人申込書のコピー、オンライン自主応募の印刷画面など
・病気やケガで就労が困難だった場合:医師の診断書
・家族の介護をしていた場合:介護に関する記録や証明書
これらの資料を通じて、入管に対して誠実かつ具体的に状況を説明する姿勢を示すことが可能です。
4.在留資格「高度専門職」への切り替え
現在の在留資格が「技術・人文知識・国際業務」などの就労系資格であり、学歴・年収・職歴などに自信がある場合は、「高度専門職」への切り替えを検討する価値があります。
高度専門職ポイント制度では、70点以上を取得すれば在留が3年、80点以上であれば1年で永住許可申請が可能になります。
この制度を活用することで、一般的な在留期間の要件である10年よりも短い期間で永住権の取得を目指すことができます。
5.専門家への相談
永住許可申請や在留資格に関する手続きは複雑であり、個々の事情によって対応が大きく異なるため、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。行政書士は過去の在留歴を分析し、適切な申請戦略を立てることに長けています。また、申請のタイミングについても助言を受け、計画的に永住許可申請を進めることが望ましいです。
まとめ
永住許可申請において「在留期間の空白」が発生すると、これは申請の大きな障壁となることがあります。空白期間とは、就労や居住の実態が途絶えた期間を指し、この期間が長いと在留実績がリセットされてしまいます。ただし、病気や事故、不可抗力などの合理的な理由があれば、空白期間が問題とならない場合もあります。
空白期間が生じた場合は、早期に理由書や証拠書類を整備することが重要です。また、無職期間が長引いた場合は、在留資格の変更、特に高度専門職への切り替えを検討することも有効です。さらに、申請が複雑な場合は専門家に相談し、適切な申請戦略を立てることが望ましいです。