「永住権取り消し」の従来基準と法改正の新ルールを完全ガイド

2024年6月施行の入管法改正により、日本における永住者の在留資格の取り消し条件がよりきびしくなり、永住資格を維持するための義務が強化されました。これにより、永住者が継続して日本社会に貢献することが強化されます。
このコラムでは、永住権の取り消しの現状や防止策について解説いたします。

永住権の基本的な要件とその重要性

永住権は、日本で長期的に生活し、社会に貢献する外国人に与えられる特別な資格で、通常の在留資格とは異なり、活動や滞在期間に制限がありません。永住者となるためには、①素行が善良であること(素行善良要件)、②経済的に独立していること(独立生計要件)、③社会に貢献すること(国家適合要件)、を満たす必要があります。

これらの審査基準に基づいて、永住権は与えられ、取得後は外国籍のままでありながらも、通常の在留資格と異なる特権を受けることができます。
しかし、永住資格を持っていても、その維持には厳格なルールと責任が伴います。

永住資格取り消しの理由

永住資格が取り消される主な理由として、以下の要因が挙げられます:

①在留カードを更新しなかった

在留資格「永住者」の在留カードは、7年ごとに更新が必要です。在留カードの期限が切れる2か月前までに更新をしなければなりません。また、永住者が16歳未満の場合は、16歳の誕生日の6か月前までに更新が必要です。この時、在留カードに初めて写真が貼られます。

②重大な犯罪や不正行為をした

麻薬や覚せい剤の使用や販売、暴行、不法入国など、重大な犯罪に関与した場合や、虚偽申請によって永住権を取得した場合は、永住資格が取り消されます。また、引っ越しをした時は14日以内に市役所に届けたり、転職をした時は14日以内に入国管理局に届出をすることも必要です。

③再国許入可手続きを行わなかった

永住者が日本を出国する際、再入国許可を取得しなければ永住資格は取り消されます。有効期間内であれば何回も使用できる「数次有効な再入国許可」や空港で再入国EDカードにチェックを入れただけの「みなし再入国許可」などを必ず取得してから出国してください。

④納税や社会保険料を未払っていなかった

税金や社会保険料の未納も取り消しの対象となる可能性があります。特に将来的には未納が永住資格取り消しの理由となる予定です。

納税や社会保険料の未払いについて

【税金に関する永住資格取り消しの基準強化】

2024年の入管法改正(2027年施行予定)により、税金の未払いが永住資格取り消しの理由となる可能性が高まりました。特に未納が長期間続いた場合、納税義務を果たさないことが永住資格取り消しに直結する可能性があります。

税金は国家の重要な資金源であり、未納が続くことで日本国の利益が損なわれ、社会の公正性も損なわれるため、今後は納税状況の管理が厳格化されると予想されます。

【社会保険料の未納と永住資格】

社会保険料の未納も、税金の滞納・遅延と同様に日本国の利益の喪失とみなされ、永住資格取り消しの対象となる基準が強化されます。社会保険料は社会保障制度を支える重要な資金源です。一方、2024年度は社会保障関係の費用が日本の歳出の約13分の1にものぼりました。

未納が長期にわたると納付をしている他の市民との間で不公平を生じる恐れがあります。条件が厳しくなった背景には、永住権を取得した外国人が、その後社会保険料を納付しなくなるケースが増えてきたからと推測されます。

厚生労働省は日本で暮らす外国人の年金や社会保険の納付状況を把握するため初めて実態調査を実施することを2024年5月に決定しました。よって、未納の場合は、今からでも納付を始めることをお勧めします。

永住権取り消しのリスクとその防止策

永住権を保持するためには、国が定めたルールや手続きを確実に守ることが重要です。
以下の防止策を実行することで、永住資格の取り消しリスクを避けることができます。

再入国許可の徹底

日本を出国する前に必ず再入国許可やみなし再入国許可を取得してください。そして、必ず期限内に日本に戻るようにしてください。

住所変更届の提出

新しい住居に引っ越した場合は、引っ越した日から14日以内に市役所に転入届を提出してください。

転職の提出

転職した場合は、転職日からから14日以内に入国管理局のその旨を届け出てください。

重大犯罪や不正行為を避ける

日本の法律を遵守し、犯罪行為や虚偽申請には関与しないよう十分に注意してください。

税金・社会保険料の支払い

税金や社会保険料を遅滞することなく支払い、未納の状態にしないことが重要です。支払い方法を、銀行からの自動引き落としにしたり、クレジットカード払いに設定することで、未払いを防止することができます。

これらの対策を講じることで、永住権維持に必要な手続きをしっかりと守り、リスクを回避することが可能です。

現状と将来の展望

現在、永住権に関する問題点として、不正行為や法改正の遅れが指摘されています。特に、一部の外国人による納税義務の未履行や社会保険料の滞納、不正な永住資格取得が問題となっており、その結果、外国人全体が迷惑をこうむる恐れがあります。

これらの課題に対応するために、永住資格の取り消し基準をより明確にし、強化することで、税金や社会保険料の支払いを確実にする方向に進んでいます。

まとめ

永住者となることは日本での安定した生活を求める外国人にとって非常に重要なことですが、永住者であり続けるためには厳格なルールと手続きが求められます。再入国許可の取得、住所変更届の提出、転職時の届け出、税金や社会保険料の支払い、犯罪行為の回避など、日常的に守るべき義務を徹底することが永住資格を守るための基本です。

法律の改正により、今後はさらに永住者の適切な管理体制が進むことが予想され、永住者と日本社会がより良い共生関係を築くための基盤が強化されるものと思われます。
ご不安やご不明点がある際は、行政書士に相談することをお勧めします。