「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザを高度専門職ビザに変更すると、永住権を取得する際、通常より早く取得できる可能性が高まります。
制度の目的と仕組み
高度人材制度が創設される前は、高度人材に該当する外国人には「特定活動」という在留資格が付与されていました。特定活動とは、他の在留資格のいずれにも該当しない場合に、法務大臣が個々の外国人ごとに活動内容を指定して認める在留資格です。
そして、優れた能力を持つ外国人を積極的に受け入れるための施策として、2015年に「高度人材ポイント制」が導入されました。この制度では、外国人の学歴、職歴、年収などの項目に対してポイントを付与し、合計で70点以上を取得した場合に「高度専門職」という特別な在留資格が認められる仕組みです。
このポイント制度の対象となる活動は、大きく以下の3つのカテゴリーに分類されています。
高度学術研究活動
(高度専門職1号イ)
大学や研究機関などにおいて行われる、研究または教育に関する活動。高度な学問的知識や研究能力が求められる職種が対象となります。
高度専門・技術活動
(高度専門職1号ロ)
一般企業などにおけるIT分野、技術職、法律関係などの専門的な職務です。
高度経営・管理活動
(高度専門職1号ハ)
企業や組織の経営またはマネジメントに関わる活動であり、会社の意思決定や経営戦略に関与する高い管理能力が求められる職務が対象です。
このポイント制度で70点以上を取得すると、出入国や在留に関するさまざまな優遇措置を受けることができます。
さらに、2023年4月からは、従来の高度人材ポイント制度とは別に、より高い基準を満たす外国人を対象とした新たな「特別高度人材制度(J-Skip)」が始まりました。この制度は、特に高年収かつ高学歴の外国人を対象としており、従来の制度以上に迅速かつ円滑な在留許可および永住申請の道を開くことを目的としています。
このように、日本は制度を段階的に整備し、世界中から優秀な人材を呼び込み、長期的な在留や定住を促進する環境を強化しています。
高度外国人材とは
「高度外国人材」とは、平成21年の「高度人材受入推進会議報告書」により以下のように定義されています。この定義によれば、高度外国人材とは、次のような特徴を備えた外国人労働者を指します。
・国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することができない良質な人材であること
・日本の産業にイノベーションをもたらし、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促進すること
・日本の労働市場の効率性を高めることが期待されること
このような高度外国人材は、単に日本国内で就労するだけの存在ではありません。彼らは、日本社会全体に対して積極的な影響を与える存在と位置づけられており、労働市場や経済だけでなく、広い視野で日本の社会的発展に貢献することが想定されています。
そのため、国としては、こうした人材を積極的に受け入れていく方針を掲げ、制度整備や支援体制の強化を進めています。
高度人材ポイント制度における永住申請の時間的要件と継続評価の重要性
高度人材ポイント制度において、永住権申請の条件は単に現在のポイント数だけでなく、過去の状態も含めて審査されます。
たとえば、70点以上のポイントを取得している人は、永住申請のために3年以上の在留が必要ですが、それに加えて「申請時点」と「3年前の時点」の両方で70点以上を満たしていることが求められます。つまり、制度上は3年間にわたって安定して高度人材として認定されていた実績が必要なのです。
一方、80点以上のポイントを取得している人には、さらに優遇された特例が適用されます。永住申請のための在留期間が1年に短縮されますが、これも「申請時点」と「1年前の時点」の両方で80点以上を維持していたことが条件です。
高い評価を受けている人材であっても、継続的にその水準を保っていたことが証明されなければ、特例の対象にはなりません。
このように、永住申請においては「今の自分が何点か」だけでなく、「過去の自分もその水準にあったか」が問われるため、ポイントの維持と記録の管理が非常に重要になります。
年収の変動や年齢による減点など、時間の経過とともにポイントが変化する可能性があるため、定期的な自己チェックが欠かせません。永住権取得を目指すなら、制度の仕組みだけでなく、時間軸に沿った戦略的な準備が必要です。
ポイントの仕組み
高度人材ポイント制における評価項目や配点は法務省令で規定されており、以下の条件に基づいてポイントが付与されます。
・学歴(学士・修士・博士など)
・職歴(どの分野で何年働いたか)
・年収
・年齢
・国家資格(独占資格)の保持
・日本語能力
・特許や研究実績
・表彰など
優遇される内容
高度専門職1号の優遇内容:
・1つの在留資格で複数の仕事が可能。
・最長5年間の在留が認められる。
・特定活動告示33号の2の適用により、配偶者の就労に関する優遇が得られる。
・永住許可申請の要件が緩和される。
・条件を満たせば、自分の親を日本に呼ぶことができる。
・条件を満たせば、家事を手伝う人を日本に呼ぶことができる。
・入国や在留に関する手続きが優先的に処理される。
高度専門職2号の優遇内容(さらに上のランク):
・「高度専門職1号」の活動に加え、ほぼすべての就労資格の活動が可能となる。
・在留期間が「無期限」となる。
まとめ
高度人材ポイント制は、優秀な外国人にとって非常に魅力的な制度です。
「高度人材ポイント制」は、学歴、職歴、年収などに基づいて優秀な外国人を評価し、70点以上を得た場合に「高度専門職」の在留資格が与えられる制度です。
この資格を持つことで、配偶者の就労や親の帯同が可能になり、永住許可申請も通常より早く行えるようになります。
さらに、2023年から「J-Skip制度」が導入され、高年収・高学歴の人材は、より迅速に在留資格を取得できるようになりました。
在留資格を高度専門職に変更することは、永住権を取得する近道となります。