永住権と出国期間の関係には、以下の3つのパターンがあります。
1.永住許可申請前:出国が多いと、永住権申請要件である「継続して日本に10年以上在留すること」を満たさなくなる可能性があります。
2.永住許可申請中:永住権申請中に出国が多い場合、申請が棄却されるリスクがあります。
3.永住権取得後:永住権を取得した後でも、出国期間が長いと永住権が取り消されるリスクがあります。
このコラムでは、これら3つのポイントについて詳しく解説します。
皆さんの状況に合わせてお読みください。
永住許可申請前のケース
永住権申請は、多くの外国人にとって日本で安定した生活基盤を築くための重要なステップです。
しかし、申請にあたっては多くの条件が課され、その中でも特に「居住要件」としての出国日数に関するルールが複雑です。
永住権取得の基本要件
まず、永住権申請には以下の4つの基本的な条件があります:
居住要件
・日本に引き続き10年以上在留していることが必要です。ただし、短縮条件を満たす場合は、この期間が1年または3年に短縮されることもあります。
素行善良要件
・納税状況や犯罪歴、交通違反の有無などを通じて素行が善良で、申請者が日本国の利益に貢献するかが審査されます。
独立生計要件
・安定した収入があり、自立した生活を営めることが求められます。
国益適合要件
・日本社会に貢献し、長期的に社会の一員として受け入れられる人物である必要があります。
この中で、「出国制限」は1番目の居住要件に該当します。
居住要件における出国日数の考え方
永住権申請において、申請者は日本に引き続き10年以上在留していることを証明する必要があります。
ここで重要なのは「引き続き」という言葉で、これは「連続して10年以上」日本に在留していることを意味します。
住民票が日本にあるだけでは不十分です。具体的なルールは以下の通りです。
連続した出国日数
・連続して日本を離れる期間は90日未満である必要があります。
年間の合計出国日数
・1年間の合計出国日数は100日未満であることが一般的な目安です。
カウント方法
・これらの日数は暦年(1月1日から12月31日)ではなく、永住許可申請を行った日からの1年間を基準にしてカウントされます。
出国日数の数え方
・出国日も1日に含まれます。たとえば、1月1日に出国し、1月3日に帰国した場合の出国日数は2日ではなく3日となります。
年間の半分以上を外国で過ごしている場合、日本に生活の基盤がないと見なされ、永住は許可されないことが多いです。
一方で、永住許可申請は継続して10年間在留するという厳しい要件がありますが、10年以上の在留歴がある場合、出国期間の基準を超えた日数が数日で、かつ1, 2回であればリセットとはならず、永住が許可される可能性があります。
10年より短い期間で永住許可申請ができる場合
・日本人の配偶者は3年、子どもは1年後
・永住者の配偶者は3年、子どもは1年後
・定住者は5年後
・高度専門職のポイント計算表のポイントが、70点以上の外国人は3年、80点以上は1年後
出国日数が多い場合の影響
連続90日以上の出国や年間100日を超える出国がある場合、「引き続き在留している」とはみなされず、居住期間のカウントがリセットされる可能性があります。特に長期の出張や出生に伴う母国への里帰りで頻繁に海外渡航する方は注意が必要です。
リセットとなると、再度日本に帰国した日から10年間待たなければなりません。
※在留資格の申請が不許可になり、特定活動(出国準備30日)となった場合は、居住期間のカウントはリセットされます(特定活動(出国準備31日以上)の場合がリセットされません)。
入国管理局による総合的な判断
出国日数が基準を超えた場合でも、特別な事情がある場合は考慮されることがあります。たとえば、会社命令による海外駐在や親の重病・危篤に伴う出国など、やむを得ない理由を証明することで、例外的に許可が下りる場合があります。このような場合には、理由を明確に説明した理由書と、その証明資料(会社からの出張指示書や母国の親の診断書)を提出する必要があります。
また、新型コロナウイルスの影響で、期間内に帰国できずに90日を超えてしまった場合など、不可抗力による事例は例外的に許容される可能性があります。実際、担当行政書士が扱った案件では、新型コロナウイルスのために90日以内に帰国できない方の永住権が許可されました。
その際には、入国制限に関する在外公館とのメールのやり取りを証拠資料として提出しました。
このように、出国日数が基準を超えても永住権が取得できる場合があります。これは法務大臣の裁量、つまり入国管理局が許可の可否を個別条件だけでなく、申請者の状況を総合的に見て判断しているためです。この点は、帰化の条件とは異なります。
永住許可申請中のケース
永住許可の申請中に長期間海外に出国する場合、入国管理局への事前報告と必要な手続きを行うことが求められることがあります。長期の出国を予定している場合、申請手続きに影響を与えないよう、出国前に入国管理局に確認しておくことをお勧めします。
永住権取得後のケース
永住者の資格を失わないためには、出国前に適切な手続きを行うことが重要です。出国期間が1年を超える場合は、必ず「再入国許可」や「みなし再入国許可」を取得する必要があります。
再入国許可の種類
1)出国期間が1年以内の場合
出国期間が1年以内であれば、「みなし再入国」を利用できます。みなし再入国は、出国時に空港で「再入国出入国記録(EDカード)」のDEPARTURE側にある「2.一時的な出国であり、再入国する予定です」の欄にチェックを入れるだけで、1年以内に日本に帰国する意思を表明できます。この場合、手数料はかかりません。
ただし、担当の行政書士は、「みなし再入国許可」よりも「再入国許可」を取得することをお勧めしています。なぜなら、一度出国してしまうと期間の延長ができないからです。
2)出国期間が1年を超える場合
出国期間が1年を超える場合は、再入国許可を事前に取得する必要があります。再入国許可の申請は、出国前に居住地の入国管理局に対して行います。
-交付日:申請をした当日
-必要書類:再入国許可申請書,在留カード,パスポート,手数料が必要です。
-手数料:シングル再入国許可(1回限り)3,000円、マルチ再入国許可(有効期間内で何度でも使用可能)6,000円。
-有効期限:最大5年であり、5年以内であれば何度でも出入国が可能です。ただし、出国時に再入国許可を取得せずに1年以上出国した場合、永住資格は無効となり、日本に戻るためには新たにビザを取得しなければなりません。そのため、再入国許可を取得する際は、期限内で何回でも出入国できるマルチ再入国許可を取得することをお勧めします。
なお、再入国許可申請は行政書士が代行することも可能ですので、申請方法が不明な方や時間がない方は代行を依頼するのも良いかもしれません。
永住資格を喪失する場合
再入国許可またはみなし再入国許可を取得せずに出国し、再入国期限内に帰国しなかった場合、永住資格は失効します。
永住権を失うと、新たに就労ビザなどを取得し、大使館や領事館で査証を取得して入国しなければなりません。
再入国手続きの注意点
-再入国許可を取得してから出国すること。
-再入国許可の有効期限を確認し、期限内に帰国すること。みなし再入国を利用する場合でも、1年に一回は帰国する計画を立てるのが無難です。
-不明点があれば、外国人在留総合インフォメーションセンター(TEL:0570-013904)で確認するのが良いでしょう。
まとめ
永住権を申請する際や取得後には、出国日数が重要な影響を及ぼします。
まず、申請前には「引き続き10年以上日本に在留していること」が条件となり、連続90日以上の出国や年間100日を超える場合はカウントがリセットされるリスクがあります。
また、申請中も出国日数が審査対象となり、長期出国は申請却下の要因となり得ます。
永住権取得後も1年以上日本を離れる場合は再入国許可やみなし再入国許可が必要で、手続きを怠ると永住資格を喪失する可能性があります。出国前にしっかりと準備をし、手続きを行うことで、取得した永住権を無駄にせず、安心して海外出張や母国への帰省を行いましょう。
不明点などがある場合は、行政書士サポートを受けるのもよいかもしれません。