永住権を取得することは、日本での生活を安定的かつ継続的に営むための大きな第一歩です。就労や居住に関する制限がなくなり、長期的なライフプランを立てやすくなると同時に、将来に向けた資産形成にも本格的に取り組むことが可能になります。
このコラムでは、永住者が安心して暮らすための資産形成の基本と、節税を意識した具体的な手段について解説します。
安全な貯蓄から始める:銀行預金
資産形成の第一歩として、多くの方がまず銀行口座に貯金を始めるでしょう。資産形成を進める上で、初めのうちは「リスクを取らない」安全な資産の確保が重要です。日本の銀行は世界的に見ても信頼性が高く、安全な資産保管場所と言えます。例えば、預金保険制度により、万が一の場合でも元本1,000万円とその利息までが保護される仕組みになっており、非常に高い信頼性があります。
また、最近ではネット銀行の普通預金でも、以前とは異なり一定の利息が付くものが増えてきました。
何より、普通預金は急な出費に備えた生活防衛資金として最適です。目安としては、生活費の3〜6か月分程度を手元に確保しておくと安心です。これにより、急な病気や仕事の変化にも柔軟に対応できます。
将来に向けてお金を「育てる」:投資信託とつみたてNISA
一定の貯蓄ができたら、次に考えたいのが「資産を育てる」ための投資です。特に初心者におすすめなのは、投資信託と「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」です。
投資信託は、専門家が株式や債券など複数の金融商品に分散投資してくれる仕組みで、1,000円程度から購入可能です。知識がなくても手軽に始められるのが魅力です。投資信託には、ハイリスク・ハイリターンのアクティブ運用型とローリスク・ローリターンのインデックス運用型がありますが、初めのうちは確実な資産形成の観点からインデックス型で運用するのがよいと思います。
つみたてNISAを活用すれば、年間120万円までの投資に対する運用益が非課税になります。つまり、通常かかる約20%の税金が一切かからないという大きなメリットがあります。また、生涯を通じて非課税保有限度額が1,800万円となりました。積立は毎月自動で引き落とされるため、時間のない方でも続けやすく、長期的にコツコツと資産を増やすことが可能です。
大きな資産を築く:株式投資や不動産投資
資産形成において、ある程度の資金や経験を積んだ段階では、より大きなリターンを狙える「株式投資」や「不動産投資」を考えてみてもよいかもしれません。
株式投資は、企業の成長に期待して株を買い、その値上がり益や配当金を得る方法です。特に日本企業の中には、安定した配当を出す優良銘柄が多く、中長期的に資産を増やす手段として有効です。また、日本には株主優待という制度があり、楽しみながら株式投資を行うこともできます。
永住権を持っていると、日本の金融機関から日本人と同じ金利で資金を借りることができます。不動産投資は、投資賃貸収入という安定した収入を生み出しやすく、老後の生活資金としても期待できます。将来的に母国との二拠点生活を視野に入れる場合にも、資産価値のある不動産は心強い味方になります。ただし、不動産投資には相当な資金が必要であり、悪徳業者も存在するため、リスクが伴います。このため、専門家の意見を交えて慎重に検討することが必要です。
老後の安心を作る:公的年金とiDeCoの活用
日本では、一定の条件を満たせば誰でも国民年金や厚生年金に加入し、老後に年金を受け取ることができます。ただし、年金だけで十分に生活できるかは疑問視する声もあり(いわゆる老後2000万円問題)、自分で老後資金を準備する自助努力も重要です。
ここで注目したいのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。iDeCoは毎月一定額を自分で積み立てて運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取る制度です。iDeCoの最大の魅力は節税効果の高さで、以下のようなメリットがあります。
・掛金は全額所得控除なので、所得税や住民税が軽減される
・運用益が非課税なので、効率的に資産が増える
・年金として受け取ることにより、「公的年金等控除」が適用される
自営業、会社員、公務員など、職業によって掛金の上限は異なりますが、誰でも加入できるため、将来に備えて早めに始めることをお勧めします。
起業や副業による収入
永住権を取得した方の大きな強みの一つは「自由に働けること」です。これを活かして、会社に勤めながら副業をしたり、自分で事業を立ち上げることが可能になります。
仕事の選択においては、自身の強みを活かすことが成功への近道です。
以下にいくつかの例を示します。
・母国語を活かした語学教室や通訳・翻訳
・母国の食材や雑貨を扱うECショップ
・母国への日本製品の輸出業務
・母国の料理を活かしたレストランの運営
節税を意識した資産形成
資産を増やすだけでなく、「税金をどれだけ抑えることができるか」も資産形成のポイントとなります。日本では、さまざまな制度を活用することで、合法的に節税しながら資産を築くことができます。
主な節税手段は以下のとおりです:
・つみたてNISA:運用益がすべて非課税(最大20年間)
・iDeCo:掛金が全額所得控除、運用益非課税、受取時にも優遇措置あり
・住宅ローン控除:住宅購入後、10年間(または13年間)にわたって所得税が減額される
・副業・事業収入の必要経費計上:通信費や光熱費の一部、事務用品費などを控除可能
これらを組み合わせて活用すれば、効率よく資産を増やしながら、納税額を最小限に抑えることが可能となります。
まとめ
永住権を取得した後に考えるべきことは、将来の自分や家族のために計画的な資産形成を始めることです。無理をせず、まずはできることから始めてみましょう。最も大切なのは「自身の強みを活かしたビジネスを選択すること」と「それを継続すること」です。
もしライフスタイルや収入、家族構成に合わせた具体的なアドバイスをご希望であれば、それぞれの専門家に相談してみるのも良いでしょう。