日本の永住権申請:完全ガイド

目次

日本での長期滞在を考えている外国人にとって、永住権の取得は重要なステップです。このコラムでは、永住権申請に関する基本情報や申請のための要件を解説します。

永住権申請の基本

永住権申請とは

永住権申請とは、外国人が日本に無期限に滞在する権利を得るための手続きです。この申請が承認されると、「永住者」という在留資格が与えられ、より安定した生活基盤を築くことができます。永住権を取得することで、外国人は日本社会に深く根ざし、長期的な視点で生活設計を行うことが可能になります。

永住権と就労ビザとの違い

永住権と就労ビザとの主な違いは以下の通りです:

滞在期間

永住権は無期限、就労ビザは期限あり(1年から5年)

活動制限

永住権は制限なし、就労ビザは特定の活動に限定

更新手続き

永住権は不要、就労ビザは定期的な更新が必要

就労の自由

永住権は制限なし(公務員以外)、就労ビザは在留資格ごとに制限あり

これらの違いから、永住権は外国人にとって日本での生活をより安定させ、日本人と同様の生活基盤を提供することが理解できます。

永住権申請のメリット

期限がない在留期間

日本での長期的な生活設計が可能になります。

就労の自由

職種や勤務先の制限なく、自由に就労できます。

ビザ更新が不要

定期的なビザ更新の手間と不安から解放されます。

日本社会での信頼性が向上

さまざまな場面で、日本人と同じ待遇が受けられます。

金融サービスの利用しやすさ

住宅ローンなどの金融サービスを受けやすくなります。

起業がしやすくなる

永住権を取得すると、就労制限がなくなり、会社経営も可能になります。

家族のメリット

家族は、就労制限のない「永住者の配偶者等」という在留資格を取得できます。

これらのメリットにより、永住権保有者は日本社会により深く溶け込み、充実した生活を送ることができます。

年齢について

永住権申請に関して、法律上の年齢制限はありません。
年齢に関わらず、申請者の日本社会への貢献度や適応能力が総合的に判断されます。

申請前の準備チェックリスト

申請前にチェックすべき項目

在留期間の確認

必要な在留期間を満たしているかを確認します。

申請書の下書き

申請書のサンプルを入手し、記入内容を確認します。

理由書の確認

審査官を納得させるに足る内容であるかを確認します。

住所と家族構成の証明

住民票を用意します。

職業の証明

在職証明書を会社で入手します。

納税状況の確認

所得税の納税証明書を税務署から、住民税の納税・課税証明書を市役所から取り寄せます。

社会保険の加入状況を確認

年金と健康保険の加入を証明する書類を入手します。

資産の証明

貯金通帳のコピーや不動産登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を準備します。

犯罪歴のチェック

交通違反を含め、日本国内での犯罪歴を確認します。

パスポートおよび在留カードの確認

残存有効期間が十分に残っているかを確認します。

身元保証人の確保

日本人または永住者の身元保証人を探し、運転免許証のコピーを取得します。

可能であれば用意したい書類

日本への貢献にかかわる資料

表彰状や感謝状が存在するかどうかを確認します。

推薦状の取得

会社の上司などに依頼します。

日本語能力の証明

JLPTなど日本語能力の証明書を用意します。

国家資格を証明

国家資格証のコピーを用意します。

健康診断の受診

必要に応じて健康診断を受診します。麻薬や覚せい剤の常習者でないことを証明します。

これらの項目を事前にチェックし、必要な準備を整えることで、申請手続きがスムーズに進むようになります。

申請から取得までの一般的な流れ

1. 申請資格の確認

– 滞在期間、経済状況、犯罪歴などの基本的な条件を確認します

– 必要に応じて、地方出入国在留管理官署や外国人在留総合インフォメーションセンター(0570-013904)に事前に相談します

2. 必要書類の準備

– 申請書や証明書類などを用意します

3. 申請書の提出

– 最寄りの出入国在留管理局で申請します

4. 審査

– 出入国在留管理庁のホームページでは、標準処理期間は4か月とされています。しかし、担当の行政書士が永住許可申請を行った際には、窓口で入国管理局の職員から審査期間は1年4か月かかると説明されました。一方で、担当行政書士が処理した案件の中には、約5か月で許可が下りたケースもあります。

– 必要に応じて追加資料の提出が求められることがあります

5. 結果通知

– 許可または不許可の通知が郵送で届きます

– 不許可の場合は、入国管理局でヒアリングを行います。

6. 永住権申請が許可された場合の手続き

– 新しい在留カード(永住者の在留資格)を受け取ります

– 市役所などで住民登録を更新します

7. 永住権取得後の注意点

– 在留カードには有効期限(16歳以上は7年、16歳未満は16歳の誕生日まで)があるため、期限内に更新することが必要です

– 1年以上日本から出国する場合は再入国許可が必要です

申請に関する統計データ

出入国在留管理庁の統計によると:

  • 2016年末:727,111人
  • 2018年末:771,568人
  • 2020年末:825,724人
  • 2022年6月末:836,414人

永住権の許可率は以前は約70%でしたが、近年は50%前後で推移しています。また、コロナパンデミック以降、申請数は増加傾向にあります。

よくある誤解

誤解1:
永住権があれば、無条件で日本国籍を取得できる
事実 :
永住権と帰化は別の手続きであり、国籍取得には別の条件があります
誤解2:
永住権があれば、海外に長期滞在しても問題ない
事実 :
1年以上日本を離れる場合は、再入国許可が必要です。長期間日本を離れると、永住権が取り消される可能性があります。
誤解3:
永住権は一度取得すれば、更新の必要がない
事実 :
永住権の更新は不要ですが、在留カードは定期的に更新する必要があります。
誤解4:
永住権があれば、どんな仕事でもできる
事実 :
ほとんどの職種で働くことができますが、公務員職など、日本国籍が必要な職種も存在します。
誤解5:
永住権があれば、生活保護を受けられる
事実 :
永住権者も生活保護の対象となることがありますが、受給には厳格な審査があり、場合によっては永住権が取り消される可能性もあります。

永住権取得のための法律上の要件

必要な在留期間

一般的な永住権申請には、「①引き続き10年以上日本に在留していること」、「②この期間のうち5年以上は就労ビザで働いていること」、「③在留資格の期限が3年以上であること」の3点が求められます。

ただし、下記の場合は在留期間が短縮されます:

日本人、永住者及び特別永住者の配偶者

3年以上の実態を伴う婚姻関係があり、かつ継続して1年以上日本に住んでいる場合、永住申請が可能です。

日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の子ども

1年以上日本に住んでいれば永住申請が可能です。

定住者

5年以上日本に住んでいれば永住申請が可能です。

高度専門職

高度専門職ポイント制において、70点以上であれば3年、80点以上であれば1年で永住申請が可能です。

難民申請をしていた外国人

認定の日から5年以上日本に住んでいれば永住申請が可能です。

生活費を自力でまかなう力

申請者が独立して生計を維持できることを証明する必要があります。

具体的には:

  • 年収が300万円以上で、家族一人につき追加で70万円の収入があること
  • 過去5年間にわたり、年収が300万円以上であること
  • 預貯金、債券、株式、不動産などの財産が十分にあること

経済的自立の証明は、申請者が日本社会に負担をかけずに生活できることを示す上で重要です。

犯罪歴のチェック

申請者は「素行が善良であること」が求められます。

具体的には:

  • 日本国内での重大な犯罪を犯していないこと
  • 重大な交通違反がなく、軽微な交通違反も頻繁には起こしていないこと
  • 家族を含め、入管法に違反(不法滞在、資格外活動など)していないこと

全体的に素行の良さが求められます。

日本からの出国期間

日本からの出国は、年間合計で100日未満である必要があり、かつ、一回の出国は90日未満でなければなりません。

納税義務の履行

申請者は、日本での滞在中に適切に納税義務を果たしていることを証明する必要があります。

具体的には:

  • 所得税の納税証明書
  • 住民税の納税証明書(過去5年分以上)
  • 社会保険料の納付証明

を行政から入手することで証明します。

適切な納税は、申請者が日本国の利益に貢献し、責任ある市民として行動していることの証明となります。

家族の永住権申請条件

配偶者

– 安定した生活基盤があること

– 現在の在留資格の期限が3年以上あること

子ども

– 引き続き日本に1年以上住んでいること

– 現在の在留資格の期限が3年以上あること

高度人材への特典

申請者が「高度専門職」の在留資格を保持している場合や、みなし高度人材に該当する場合は、永住権申請の要件が緩和されます:

  • ポイント制度に基づくポイント獲得で、永住許可申請に必要な在留期間が短縮されます
  • 80点以上:1年間の在留で申請可能
  • 70点以上:3年間の在留で申請可能
  • ポイントは、ポイント計算表の学歴、職歴、年収、年齢などで計算されます

これらの優遇措置は、日本の経済や科学技術の発展に貢献する人材を積極的に受け入れる政策の一環です。

まとめ

日本の永住権申請は、長期的な日本滞在を希望する外国人にとって重要なステップです。申請にはさまざまな要件がありますが、適切な準備と計画があれば、取得は十分に可能です。

永住権を取得することで、より安定した生活が可能になり、日本社会に溶け込みやすくなります。ただし、永住権は権利であると同時に義務も伴います。日本の法律やルールを守り、社会に貢献することが求められます。

永住権の申請を考えている方は、自分の状況を客観的に評価し、適切な準備をすることが重要です。特に、在留期間、経済的自立、善良な行動、日本社会への適応度が、許可の成否に大きく影響します。

永住権申請のプロセスは複雑で、時間がかかることがあります。最新の情報を入手し、必要に応じて行政書士などの専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。また、出入国在留管理庁のホームページや外国人在留総合インフォメーションセンター(0570-013904)も役立つ情報源です。

永住権申請は、慎重な準備と前向きな姿勢が求められる挑戦ですが、その先には日本社会でのより安定した豊かな生活が待っています。