はじめに
永住者になると、無期限で日本に滞在でき、日本人と同様の活動が可能です。また、永住者は「永住者の配偶者等」の在留資格を利用して、母国から配偶者や子どもを呼び寄せることができます。一方で、永住者の親を母国から日本に呼び寄せ、一緒に生活することは原則としてできません。
親の日本在留が認められる5つのケース
- 1) 90日以内の滞在であれば、「短期滞在」の在留資格で入国できます。
- 2) 1年以内の滞在であれば、観光・保養ビザで入国できます。
- 3) 親自身が技術・人文知識・国際業務や経営・管理などの就労系の在留資格を取得することで、日本に在留することができます。ただし、実際に会社で働いたり、会社経営を行うことが必要です。そのため、高齢の場合は難しいことがあります。
- 4) 母国で病気などにより介護が必要で、さらに身寄りがない場合、人道的見地から日本に呼び寄せることができる場合があります。
- 5) 高度専門職で働く外国人が7歳未満の子どもの養育が必要な場合、一定の条件を満たせば母国から親を呼ぶことができます。
高齢の親に健康上の問題があるため呼び寄せる場合
親を呼び寄せるための条件
- 1.病気や障害などのために介護が必要であること
- 2.母国に面倒を見てくれる親族がいないこと
- 3.原則として70歳以上の高齢者(後期高齢者)であること
- 4.親を呼び寄せる子の側に、親を扶養するための十分な収入や資産があること。年収800万円以上が目安とされています。
親を呼び寄せる手続きのフロー
この場合、「告示外特定活動」の在留資格で親を呼び寄せます。在留資格「特定活動」は、通常の申請手続きである「在留資格認定証明書交付申請」では呼び寄せることができません。
まず初めに、90日の「短期滞在」で日本に入国します。次に、「在留資格変更許可申請」を行い、「特定活動」に切り替えます。
この手続きは通常の手続きとは異なるため、入国管理局と綿密に相談しながら進めることをお勧めします。
特定活動への変更には1~2か月かかります。
親を日本に呼び寄せるために必要な資料
- 1.在留資格変更許可申請書
- 2.写真
- 3.返信用封筒(オンライン申請でない場合)
- 4.パスポート(提示用として)
- 5.在留カード(提示用として)
- 6.病気や障害などのため介護が必要であることを証明する資料(医師の診断書など)
- 7.母国に面倒を見てくれる親族がいないことを証明する資料(配偶者の死亡届など)
- 8.子どもとの親子関係を証明する資料(戸籍謄本、出生証明書など)
- 9.子どもの扶養関係を証明する資料(本国への送金記録など)
- 10.子どもの扶養能力を証明する資料(源泉徴収票、預貯金通帳など)
高度専門職で働く外国人が親を呼び寄せる場合
以下の条件を満たす場合、高度専門職の外国人は告示34号に基づき、両親または配偶者の両親を呼び寄せることができます。
親を呼び寄せるための条件
- ①7歳未満の子どもの養育が必要であること
- ②世帯年収が800万円以上であること
- ③親と同居すること
- ④呼び寄せる親は、高度専門職またはその配偶者のどちらかの親(父または母、もしくは両親のいずれか一方)であること。夫婦両方の親を呼び寄せることはできません。
親を日本に呼び寄せるために必要な資料
- 1.在留資格認定証明書交付申請書
- 2.写真
- 3.返信用封筒(オンライン申請でない場合)
- 4.高度人材外国人の世帯年収を証明する文書
- 5-1.親が高度人材外国人またはその配偶者の7歳未満の子を養育しようとする場合
- (1)親と高度人材外国人またはその配偶者との身分関係、および養育しようとする者が高度外国人材またはその配偶者の7歳未満の子であることを証明する以下のいずれかの文書
- a.戸籍謄本
- b.婚姻届出受理証明書
- c.結婚証明書のコピー
- d.出生証明書のコピー
- (2)高度外国人材、高度外国人材の配偶者、およびその7歳未満の子の在留カードまたはパスポートのコピー
- (1)親と高度人材外国人またはその配偶者との身分関係、および養育しようとする者が高度外国人材またはその配偶者の7歳未満の子であることを証明する以下のいずれかの文書
- 5-2.親が高度外国人材の妊娠中の配偶者、もしくは妊娠中の当該高度外国人材に対し、介助、家事その他の必要な支援を行おうとする場合
- (1)親と高度外国人材またはその配偶者との身分関係を証明する以下のいずれかの文書
- a.戸籍謄本
- b.婚姻届出受理証明書
- c.結婚証明書のコピー
- d.出生証明書のコピー
- (2)高度外国人材またはその配偶者が妊娠中であることを証明する文書(診断書、母子手帳のコピーなど)
- (3)高度外国人材およびその配偶者の在留カードまたはパスポートのコピー
- (1)親と高度外国人材またはその配偶者との身分関係を証明する以下のいずれかの文書
まとめ
永住者が母国から親を呼び寄せることは原則として認められていませんが、特定の条件を満たす場合に限り可能です。
短期間の滞在であれば「短期滞在」ビザや観光・保養ビザが利用できますが、長期滞在には制約があります。
親が病気や障害で介護が必要であり、かつ身寄りがない場合、人道的見地から「特定活動」ビザへの変更が認められることがあります。この場合、呼び寄せる子どもには年収800万円以上の扶養能力が求められます。
また、「高度専門職」として働く外国人は、7歳未満の子どもの養育を目的として親を呼び寄せることができますが、世帯年収や同居などの厳しい条件があります。
親の就労系在留資格は非常に厳しく審査される傾向があるため、入国管理局や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。