身元保証人とは
日本で永住権または永住ビザを申請する際には、「身元保証人」が必ず必要です。身元保証人とは、申請者が日本の法令を遵守し、公的義務を適切に履行するための支援を保証する役割を果たします。ただし、身元保証人には法的な強制力はなく、連帯保証人のような法的責任を負うことはありません。また、申請者が法令違反を犯した場合でも、保証人が責任を問われることはありません。
永住許可申請に身元保証人が必要な理由
永住許可申請に身元保証人が必要な理由について、出入国在留管理庁では具体的な記述がありませんが、担当の行政書士は以下の2点が理由であると考えています。
・永住権を取得したい人は、日本に親族や友人がいると入国管理局は考えていると思われます。申請者が身元保証人を見つけられない場合、入国管理局はその申請者が日本社会に十分に溶け込んでいないと判断する可能性があります。
・身元保証人を引き受けてもらうことで、申請者は身元保証人に迷惑をかけてはいけないと考え、法令違反やルール違反を抑制する効果があると推測されます。
身元保証人になれる人
身元保証人の役割は、申請者が法令を遵守し、公的義務を果たすことを確認することであり、一般的には申請者とある程度近い関係にある人がなることが求められます。
身元保証人になれるのは、日本人または日本の永住権を持つ外国人のみで、永住権を持たない外国人の友人に身元保証人を依頼することはできません。
在留資格と身元保証人の関係は以下の通りです:
・就労系ビザからの申請 ⇒ 勤務先の上司・同僚や永住者の友人など
・日本人の配偶者・永住者の配偶者ビザからの申請 ⇒ 日本人配偶者や申請者の親族など
・経営・管理ビザからの申請 ⇒ 経理を依頼している税理士など
なお、身元保証人の代行業者は存在しますが、これらの業者を利用しても、身元保証人が申請者と近い関係にないため、永住許可が下りる可能性はほぼありません。
身元保証人を引き受けてもらえない場合は・・・
身元保証人は、一般的な保証人とは異なり、法的な強制力が一切ありません。たとえば、申請者が傷害事件を起こし、損害賠償をしなければならない場合でも、身元保証人がその損害賠償を肩代わりする必要はありません。
身元保証人には道義上の責任があるのみです。出入国在留管理庁のホームページのQ&A No.52には、以下のように記載されています。
「身元保証書の性格について、法務大臣に約束する保証事項について身元保証人に対する法的な強制力はなく、保証事項を履行しない場合でも当局からの約束の履行を指導するにとどまりますが、その場合、身元保証人として十分な責任が果たされないとして、それ以降の入国・在留申請において身元保証人としての適格性を欠くとされるなど社会的信用を失うことから、いわば道義的責任を課すものであるといえます。」
つまり、身元保証人は、外国人が義務を果たさなかった場合でも法律上の処罰を受けることはありません。
もし、申請者と近い関係にある人が身元保証を引き受けてくれない場合、それは「身元保証人」の意味を誤解している可能性があります。その際は、出入国在留管理庁のホームページのQ&A No.52やインターネットの記事などで、身元保証人には法的責任がないことを説明すると良いでしょう。
身元保証人になることは全くリスクがないとは言えませんが、親しい友人であれば、友人をサポートしたいという気持ちが強くなるでしょう。実際、担当行政書士の息子は、何人もの外国人の友人の身元保証人になっています。
一方、一度身元保証人になると、法律上その役割を辞めるための明確な手続きはありません。たとえば、申請者と身元保証人のビジネス上の関係がなくなったとしても、身元保証人の関係は消えません。
身元保証人になれる人の条件
以下は身元保証人に求められる条件ですが、すべての条件を満たさない場合でも、身元保証人自体が却下されることはありません。ただし、身元保証人は日本人または永住者であることが必須です。
1.日本人または永住者であること
日本人または永住ビザを取得した外国人(特別永住者を含む)である必要があります。永住ビザを取得した外国人は、申請者よりも長く日本に滞在していることが多く、安定した生活を送っていると入国管理局は考えているからです。
2.申請者と関係性があること
会社の上司・同僚、友人、配偶者、親族などが該当します。特に日本人または永住者と結婚している場合は、配偶者が保証人となることが一般的です。代行業者は認められません。
3.安定した収入があること
永住権申請のような厳格な年収額は求められませんが、年間300万円以上の定期的な収入が望ましいとされています。保証人に安定した収入がないと、身元保証人としての義務を果たせないためです。
4.税金を適切に納めていること
この条件は収入条件と同様です。以前は、身元保証人の納税証明書も必要書類とされていました。
5.法令遵守や公的義務の履行を支援できる関係性があること
申請者が日本の法令を遵守し、納税などの公的義務を果たすよう支援する立場であることが求められます。これを保証するため、入国管理局に身元保証書を提出します。ただし、身元保証書には法的拘束力はありません。
永住許可申請の際に提出する身元保証人に関する書類
身元保証人に関する書類は、以下の2つです。
・身元保証書
・運転免許証のコピーなど、本人が確認できる書類
身元保証書の書き方
以下は身元保証書の記入例です。特に難しい点はありませんが、以下の注意点に留意してください。
・氏名欄には必ず身元保証人に署名してもらってください。
・身元保証人を永住者に依頼した場合、氏名はカタカナで記入してください。
・電話がない場合などは、記入項目に「該当なし」と記入してください。
・職業欄には会社名を記入する必要はありません。
・被保証人欄についてですが、当事務所が担当した案件では、身元保証人を会社の同僚に依頼したケースで、被保証人との関係が分かりづらいとの指摘を受けたことがあります。シンプルに記入することをお勧めします。
よくある質問
Q1
身元保証人が法的責任を負わない根拠は何ですか?
A身元保証人が法的責任を負わない根拠については、入管法には明記されていませんが、出入国在留管理庁のQ&A No.52において、道義的責任に留まる旨が記されています。
Q2
無職の日本人や永住者に身元保証人を依頼できますか?
A無職の人よりも、就業している方を身元保証人として選ぶ方が無難です。ただし、無職であることだけが理由で永住申請が不許可となることはありません。
Q3
行政機関から身元保証人への連絡はありますか?
Aいいえ。ただし、短期間に50人の身元保証人になっているなど、不自然な場合は連絡があるかもしれません。
まとめ
日本で永住権を申請する際には「身元保証人」が必要であり、申請者が日本の法令を守り、公的義務を果たすことを支援する役割を果たします。
ただし、身元保証人には法的責任はなく、道義的責任に限られます。身元保証人は日本人または永住者に限られます。
また、「身元保証人」という言葉に対して誤解を持つ人がいるため、身元保証人を引き受けてもらえない場合があります。この場合、法的責任がないことを説明することが効果的です。なお、身元保証人を代行する業者が存在しますが、これは絶対に利用してはいけません。