はじめに
通常、永住権許可申請を行うには、日本に10年以上住んでいる必要があります。しかし、「高度専門職」の在留資格を持つ外国人は、永住申請の居住要件が大幅に緩和されており、3年または1年後に申請が可能です。
さらに、現在のビザが高度専門職でなくても、3年前または1年前から高度専門職ビザのポイントを保有していたことを証明できれば、永住許可申請を行うことができます。
このコラムでは、高度専門職ビザから永住者ビザへの変更に必要な要件や申請書類について解説します。
高度専門職から永住権を取得するための要件
1. 法律上の要件
1)素行が善良であること。法律を遵守し、日常生活において社会的に非難されることのない生活を営んでいる必要があります。
2)安定した収入や財産があること。年収300万円以上が目安で、家族1人につきプラス70万円が必要です。
3)日本に3年または1年以上引き続き居住していること。
4)罰金刑または懲役刑を受けた経歴がないこと。また、重大な交通違反を起こしていないことが求められます。軽微な違反であっても、過去5年間で5回以上、直近2年間で2回以上繰り返すと永住許可の取得が困難になります。また、家族が週28時間を超える資格外活動を行っていないことも重要です。
5)納税、年金、および公的医療保険の保険料の支払いを遅延することなく適切に行っていること。
6)出張や里帰りなどで、90日以上日本から出国していないこと。また、1年間のうちに合計100日以上日本から出国していない必要があります。
7)3年または5年のビザを取得していること。
8)公衆衛生上の観点から有害であるおそれがないこと。伝染病患者や麻薬中毒者の場合は申請できません。
9)日本人または永住者の身元保証人がいること。
2. 高度人材特有の要件
1) 高度専門職のポイント計算表において、ポイントが70点以上の外国人の場合
a.申請時点で70点以上であること
b.3年間継続して70点以上を維持していること
c.3年間継続して日本に居住していること
2)高度専門職のポイント計算表において、ポイントが80点以上の外国人の場合
a.申請時点で80点以上あること
b.1年間継続して80点以上を維持していること
c.1年間継続して日本に居住していること
高度専門職ポイントの計算方法は?
高度人材ポイント制におけるポイント計算は、ポイント計算表を用いて行います。主な項目は以下の通りです。
併せて、獲得ポイントを証明する資料を提出する必要があります。該当項目があっても、証明資料の準備ができない場合はポイントは認められません。
高度専門職ポイントの項目
1.学歴:大学卒業以上
2.職歴:3年以上
3.年収:400万円以上
4.年齢:39歳以下
5.研究実績:特許、学術論文など
6.国家資格:業務独占資格または名称独占資格
7.特別加算:契約機関、日本語能力など
※高度専門職ポイント計算表 Point Calculation Table
日本語 https://www.moj.go.jp/isa/content/930001673.xls
English https://www.moj.go.jp/isa/content/001398888.xls
出典:出入国在留管理庁
注意点
特に注意が必要なのは、「職歴」と「年収」のポイント計算です。
1. 「職歴」ポイントでの注意点
a.職歴とは、これまで働いてきた年数を指すのではなく、現在日本で従事している仕事と同じ内容の実務経験を指します。
b.職歴年数に加味できるのは、正社員、契約社員、派遣社員などであり、パートやアルバイトは含めることができません。
c.会社経営者の場合は、経営管理ビザが対象の「高度専門職1号ハ」を申請する際に限り、職歴年数に含めることが可能です。「高度専門職1号イ」または「ロ」を申請する場合は、従事しようとする業務に関連する実務経験年数には含めることができません。
d.個人事業主の場合は、日本の個人事業開業届出書などに該当する母国の書類で個人事業主であることを証明する必要があります。
2.「年収」ポイントでの注意点
a.確実に年収に含めることができるのは、基本給と固定残業代のみです。
b.残業代や賞与(ボーナス)は、その性質上金額が決定していないため、年収には含められません。
c.賞与(ボーナス)は金額が確定していませんが、会社から「収入見込み証明書」を発行してもらえれば、収入として認められます。
高度専門職ビザから永住許可申請をするための必要書類
1.永住許可申請書 1通
2.写真(縦4cm×横3cm)1葉
3.理由書 1通
4.世帯全員の住民票 1通
5.職業を証明する資料
(1)会社に勤務している場合:在職証明書 1通
(2)自営業である場合:申請人の確定申告書控えのコピーまたは登記事項証明書 1通、営業許可書のコピー(ある場合) 1通
6.住民税の納付状況を証明する資料
a.直近3年分の住民税の課税(または非課税)証明書および納税証明書 各1通
b.直近3年間、住民税を適正時期に納付していることを証明する預貯金通帳のコピーや領収証書
7.国税の納付状況を確認するための納税証明書(その3):源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税
8.直近2年間の年金の納付状況を証明する「ねんきん定期便」または、ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面、国民年金の方は国民年金保険料領収証書のコピー
9.直近2年間の公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料:健康保険被保険者証のコピーまたは国民健康保険被保険者証のコピー
※令和6年12月2日から健康保険証はマイナンバーカードと一体化されたもの(「マイナ保険証」)になります。したがって、健康保険証の有効期限が切れた場合や有効期限前に転職・転居などで保険者の異動が生じた場合は以下の書類を提出してください。
(1)マイナ保険証がある方:マイナポータルの健康保険証情報に記載の「資格取得年月日」が確認できる画面のコピー(3か月以内のもの)
(2)マイナ保険証がない方:「資格確認証」のコピー
10.高度専門職ポイント計算表:①申請時点でのポイント計算結果、②3年前または1年前の時点でのポイント計算結果
11.ポイント計算の各項目を証明する資料:学歴証明書、職歴証明書、年収証明書など
12.資産を証明する資料:預貯金通帳のコピーまたは不動産の登記事項証明書 1通
13.パスポートまたは在留資格証明書 (提示のみ)
14.在留カード (提示のみ)
15.身元保証書
16.身元保証人の運転免許証のコピー
17.了解書 1通
18.表彰状、感謝状、叙勲書など、日本への貢献を示す資料(ある場合)
19.セルフチェックシート
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-4.html
永住許可申請の審査期間
永住許可申請の審査期間は、申請のタイミング、申請先の入国管理局の混雑状況、および申請者の状況によって異なります。
2024年12月現在、審査の厳格化や提出書類数の増加、コロナパンデミック以降の申請件数の増加により、標準処理期間は1年以上かかると言われています。
しかし、このような状況下でも審査期間を短縮するための施策は可能です。
出入国在留管理庁が作成した「入国・在留審査要領」の第8編「審査体制」によれば、審査手順において案件は以下のAからDに振り分けられます。
– A案件:許可(交付)相当の案件
– B案件:慎重な審査を要する案件
– C案件:明らかに不許可相当の案件
– D案件:資料の追完を要する案件
提出資料がA案件に振り分けられれば、審査期間を短縮できると担当の行政書士は考えています。A案件にするためには、申請者が条件を満たすことに加え、審査官が納得する証拠資料を揃え、論理的な構成を組み立てることがポイントです。
また、永住許可申請の場合、追加資料を求められることが多いと言われています。追加資料の請求があると、資料提出まで審査が停止するため、これが審査期間の長期化の原因となります。したがって、追加要請が来ないように、事前に審査官が求める資料を確実にそろえて提出することが重要です。
実際、担当の行政書士が手掛けたみなし高度人材の案件では、わずか「5か月と8日」で家族全員の永住許可を取得しました。
よくある質問
Q1
家族も一緒に永住許可申請することはできますか?
Q2
永住許可申請が不許可になった場合、再申請はいつできますか?
Q3
私は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っていますが、高度専門職ポイント制度を利用して永住許可申請を行う場合、高度専門職ビザに変更しなければなりませんか?
まとめ
高度専門職で永住権を申請する最大のメリットは、通常10年以上の居住が必要なところを、高度人材ポイント制を活用することで1年または3年で申請できる点です。また、現在の在留資格が高度専門職でなくても、過去にポイント基準を満たしていれば申請可能である点も魅力です。
特に、学歴や職歴、年収などが高い高度専門職の方にとって、この制度は他の在留資格よりも圧倒的に有利です。
ぜひこの機会を活用し、永住権取得に挑戦してみてください。