高度外国人材の永住権取得

高度外国人材誕生の背景

高度外国人材とは、高い学歴や実務経験を持ち、専門性の高い技術や知識を有する外国人のことです。
「日本再興戦略改訂2015」では、日本の人材不足を解消し、海外の最新の知見と国内のトップレベルの知見を融合させることでイノベーションを促進するため、IT人材の受け入れ強化が求められました。また、法務省の未来投資戦略2017では、イノベーションの創出において多様な知見を持つ高度外国人材の積極的な受け入れが不可欠であるとされています。

一方で、日本は仕事のやりがい、給与、評価基準、人材育成投資などにおいて他国よりも劣っており、仕事自体の魅力が乏しいという課題があります。
実際、OECDが公表している「Indicators of Talent Attractiveness6」によれば、「高学歴労働者」カテゴリーにおいて日本は38か国中22位と低迷しています。この指標は、入国管理に関する政策、報酬、賃金、税などの経済面、家族にとっての就労・居住環境など、合計8つの側面から高度外国人材を誘致・維持する魅力度を示しています。

このような状況を打開するために、2012年には日本版高度外国人材グリーンカードを含む出入国在留管理上の優遇措置「高度人材ポイント制」が導入され、2015年には新たな在留資格「高度専門職1号」および「高度専門職2号」が新設されました。
これは、日本で活躍してもらいたい高度な能力や経験を持つ優秀な外国人に対し、優遇措置を与え、日本に貢献してもらうことを目的としています。

高度外国人材の職種

高度外国人材の職種は、以下の3つの分野と2つの類型に分けられます。

1.高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」:研究所の研究員や大学の教員
2.高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」:一般企業に所属するホワイトカラーやITエンジニア
3.高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」:会社経営者
4.「高度専門職2号」:「高度専門職1号」で3年以上在留している高度人材です。在留期間は無期限となり、就労ビザで認められるほとんどの活動を行うことができます。

高度外国人材のメリット

1.幅広い業務に従事できる

一般的な就労ビザでは特定の職種に限定されますが、高度人材はさまざまな分野での仕事が可能であり、複数の異なる職務を兼任することもできます。たとえば、ミュージシャンとして活動しながら音楽事務所の経営を行うことができます。

2.最長5年の在留期間

通常の就労ビザでは1年、3年、5年のいずれかの在留期間が設定されていますが、高度外国人材には最長の5年が付与されます。

3.早期の永住権申請が可能

永住権を申請するには一般的に10年以上の日本在留が必要ですが、高度外国人材の場合は3年または1年の在留で永住許可申請が可能です。

4.配偶者や子どもが自由に働ける

配偶者が日本で働く際は一般的に就労ビザの条件を満たす必要がありますが、高度外国人材の配偶者は、この条件を満たしていなくても、教育や技術・人文知識・国際業務などの分野で働くことが可能です。

5.親を呼び寄せることができる

日本には外国人の親を呼び寄せるためのビザは存在しませんが、高度外国人材の場合、自身または配偶者の親を呼び寄せることができます。

条件

・親が7歳未満の子どもを養育している、または高度人材またはその配偶者が妊娠していて介助が必要であること。

・世帯年収が800万円以上であること。

・高度外国人材と同居すること。

・高度外国人材またはその配偶者の親に限ります。

6.家事使用人(お手伝いさん)を呼び寄せたり、雇うことができる

母国で雇った家事使用人を日本に連れてくることは、「経営・管理」、「法律・会計業務」などで在留する一部の外国人に対してのみ認められています。しかし、高度人材であれば、外国人家事使用人を呼び寄せたり、雇うことができます。

条件

(1) 外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合

・世帯年収が1,000万円以上であること

・呼び寄せる家事使用人は1名まで

・家事使用人に対し月額20万円以上の報酬を支払うこと

・高度外国人材と一緒に日本へ入国する場合は、家事使用人は1年以上前に雇用されていたこと

・高度人材が先に日本へ入国する場合は、家事使用人は1年以上前に雇用されており、かつ、高度人材が日本へ入国した後も引き続き高度人材またはその親族に雇用されていること

・高度人材が日本を出国する場合、一緒に出国すること

(2) (1) 以外の家事使用人を雇用する場合

・世帯年収が1,000万円以上であること

・帯同できる家事使用人は1名まで

・家事使用人に対し月額20万円以上の報酬を支払うこと

・13歳未満の子または病気により日常の家事に従事できない配偶者を有すること

(3) 投資運用業に従事する金融人材が家事使用人を雇用する場合

・世帯年収が1,000万円以上であること

・帯同できる家事使用人は2名まで(ただし、2名の場合は世帯年収3,000万円以上が必要)

・家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うこと

7.入国・在留手続時の審査期間の短縮

高度外国人材に対する入国や在留審査は、優先的に早期処理が行われます。

・入国事前審査の申請:申請受理から10日以内を目途

・在留審査の申請:申請受理から5日以内を目途
一般の就労ビザでは、通常30日~60日かかります。
※「高度専門職2号」の場合
a「高度専門職1号」の活動以外に、就労関係の在留資格で認められているほとんどの活動ができます。
b 在留期間は「無期限」となります。
c 上記3~6の優遇措置が受けられます。

 参考:出入国在留管理庁のホームページ
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_preferential_index.html

高度外国人材のデメリット

1.高度専門職1号の在留期間は5年間で、在留期間の更新が必要です。在留期間の更新手続きを行う際に、ポイントが70点未満になると更新許可を得ることができません。

2.無職の期間が6か月以上続くと、在留資格の取消対象となります。

高度専門職の在留期間の要件緩和

前述したように、高度外国人材の最大のメリットは、永住許可申請の際に、日本での在留期間が10年から3年または1年に短縮される点です。

1.入国管理局のポイント計算表で70点以上であれば、永住許可申請の際の在留期間を3年に短縮できます。

2.ポイントが80点以上であれば、1年に短縮できます。
また、この制度は高度専門職に限らず、技術・人文知識・国際業務ビザや経営管理などの在留資格を持つ外国人にも適用されます。
この制度は2017年に始まりましたが、現在では多くの外国人がこの制度を利用して永住権を取得しています。

ポイントの計算方法

ここでは、高度外国人材の中で最も申請件数が多い「高度専門職1号ロ」の「ポイント計算表」について解説します。

1.学歴

・博士:30点

・修士:20点

・学士:10点

2.職歴

・10年以上 20点

・7年以上10年未満:15点

・5年以上7年未満:10点

・3年以上5年未満:5点

3.年収

・30歳未満:年収400万円以上からポイント取得が可能

・30~34歳:年収500万円以上からポイント取得が可能

・35~39歳:年収600万円からポイント取得が可能

・40歳以上:年収800万円以上からポイント取得が可能

※いずれの年齢も年収1000万円以上で40点

4.年齢

・30歳未満:15点

・30~34歳:10点

・5~39歳:5点

5.特許や学術論文

・15点

6.国家資格

・1つ保有:5点

・2つ以上保有:10点

7.日本語能力

・N1レベル:15点

・N2レベル:10点

など、ポイントの加点方法は人それぞれですが、学歴、職歴、年収を中心に構成されることが多いです。たとえば、大学院を卒業し、7年以上同一業界に勤務し、年収1,000万円を得ている高度専門職1号ロの在留資格を持つ外国人の場合、20 + 15 + 40 = 75点となり、3年の在留年数で永住権申請が可能です。

※出入国在留管理庁のポイント計算表
https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf (日本語)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001398882.pdf (English)

高度専門職から永住権を取得するための要件

高度専門職ビザから永住許可申請をするための必要書類

よくある質問

Q1
私は3月生まれの29歳です。母国の大学で修士号を取得し、5年前から技術・人文知識・国際業務の在留資格でITエンジニアとして日本で働いています。申請書類はすべて準備ができました。2か月後の4月にはベースアップにより年収700万円が見込まれます。4月にみなし高度専門職として永住申請はできますか?

Aできません。4月には30歳になっていますので、70点に届きません。(30歳: 10点、修士号: 20点、5年間勤務: 10点、年収700万円: 25点 ⇒ 合計65点)

Q2
親に赤ちゃんの面倒を見てもらうために、親を日本に呼び寄せたいのですが、高度専門職1号ビザを永住ビザに変更しても大丈夫ですか?

A永住ビザでは親を呼び寄せることはできませんが、高度専門職ビザで呼び寄せることができます。

Q3
私はポイント計算を行った結果、80点ありました。1年後に配偶者や子どもとともに永住権申請ができますか?

A最短1年の在留期間で永住申請ができるのは申請者のみです。配偶者や子どもと一緒に永住申請をするのであれば、3年後に可能です。着実性を確認された後、永住ビザの許否の判断がされます。

まとめ

高度外国人材は、高い専門性や知識を持つ外国人が日本政府の優遇措置を受けることができる制度です。この制度は、研究、技術、IT、経営などの分野で活躍する高度人材を対象としており、以下の特典があります。

・幅広い仕事の選択肢の提供

・最長5年の在留期間の付与

・3年または1年での早期永住申請が可能

・配偶者に対する就労制限なし

・親の呼び寄せが可能

・家事使用人の呼び寄せが可能

・迅速な審査

特に、ポイント計算で70点以上の場合は3年、80点以上の場合は1年の在留期間で永住申請ができることが最大のメリットです。
ぜひポイント計算を行い、不明点があれば行政書士に相談してみてください。