「永住者の子ども」が永住権を取得するためのステップガイド 

はじめに

外国人の子どもが日本に在留する場合、在留資格が必要です。取得できる在留資格は、親の在留状況や出生国によって異なります。
このコラムでは、「子どもが海外で出生した場合」と「日本で出生した場合」に分けて説明します。
なお、親のどちらかが日本人である場合、生まれた子どもは必然的に日本国籍を取得するため、入国管理局での手続きは必要ありません。

外国で生まれた子どもの永住申請

外国で生まれた場合、「定住者」の在留資格を申請する必要があります。
外国人の母親が海外で出産し、再び日本に戻って生活をする場合、子どもの「定住者」の在留資格を取得することが求められます。
このための手続きとして、まず日本に来るために在留資格認定証明書交付申請を行い、在留資格認定証明書(COE)を取得します。

その後、日本大使館や領事館で査証(ビザ)を取得します。この場合、「定住者(告示6号イ)」の在留資格が発行され、それを持参して日本に入国することができます。定住者ビザで入国した後、日本で1年以上在留し、永住権取得の要件を満たせば、永住ビザの申請が可能となります。

日本で生まれた子どもの永住申請

60日以内に日本を出国する場合はビザを取得する必要はありませんが、60日を超えて日本に滞在する場合は何らかのビザの取得が必要です。
この場合、入国管理局に「在留資格取得許可申請」を行います。その際、子どものパスポートがなくても問題ありません。

申請のタイミングによるビザの違い

【出生から30日以内に申請】

・出生から30日以内であれば、「永住者ビザ」を取得することが可能です。この場合、親が永住権を取得していることが条件となります。
ただし、親が永住権を取得していても、①経済的安定、②公的義務の遂行、③素行要件といった永住申請に必要な要件を満たしていない場合は、子どもは「永住者」の在留資格を取得できません。この場合、子どもは「永住者の配偶者等」の在留資格を取得することになります。その後、「永住者の配偶者等」の在留期間が1年以上になれば、「永住者ビザ」への在留資格変更許可申請が可能です。

【出生から60日以内に申請】

・出生から30日を超えた場合、「永住者」の在留資格を取得することはできません。ただし、出生から60日以内であれば、「永住者の配偶者等」の在留資格を申請することができます。その後、永住者の配偶者等の在留期間が1年以上になると、「永住者ビザ」への在留資格変更許可申請が可能です。

【出生から60日を超えた場合】

・出生から60日を超えても在留資格を取得していない場合、オーバーステイとなり、退去強制の対象になります。この場合は、まず入国管理局に相談してください。長期間放置すると、時間と手間を要する在留特別許可を取得する必要が生じるため、注意が必要です。

※就労ビザなど永住ビザ以外を持つ外国人が日本で子どもを産んだ場合、出生から30日以内に「在留資格取得許可申請」を行い、「家族滞在ビザ」を取得する必要があります。ただし、この場合も、60日以内に帰国するのであれば手続きは不要です。

誕生した子供のために「永住ビザ」を申請するには、4つの条件を満たす必要があります。

  • 1.親のどちらかが永住者であること
  • 2.日本国内で生まれたこと
  • 3.出生から30日以内に入国管理局に申請をしていること
  • 4.親の状況が以下の申請要件を満たしていること
① 経済基盤が安定していること

・永住者の子どもの永住権取得に際しても、収入の要件は他の在留資格とほぼ同様です。具体的には、年収300万円以上が必要で、扶養者が1人増えるごとにプラス70万円が求められます。ただし、審査の対象期間は直近1年間に緩和されます。

② 税金・年金・健康保険など公的義務を果たしていること

・要件は他の在留資格とほぼ同じですが、住民税納付の証明は直近1年分でよいと緩和されています。ただし、年金と健康保険料の納付については、他の在留資格と同様に直近2年分の提出が必要です。

③ 素行に問題がなく、公共の負担となっていないこと

・親が永住権を取得してから子どもの永住申請までの間に、懲役刑や罰金刑を受けている場合、子どもの永住権取得は困難になります。また、交通違反にも注意が必要です。

子どもの出生から申請までの手順

①出生から14日以内に、市区町村役場に出生届を提出します。出生届用紙は子どもが生まれた病院で用意されており、右側には病院の証明、左側には親が必要事項を記入します。その後、「出生届受理証明書」と、生まれた子どもを含む家族全員が記載された「住民票」を役所から発行してもらいます。

②出生から30日以内に、「出生届受理証明書」と「住民票」および指定された必要書類を持って、入国管理局へ永住許可申請または在留資格取得申請を行います。この際、パスポートがなくても、「旅券が未取得である理由書」を申請書とともに提出すれば問題ありません。30日という短期間に申請を行う必要があるため、早めに準備をすることをお勧めします。

③母国への出生手続きを、日本にある母国の大使館や領事館で行います。

④日本にある母国の大使館や領事館で、子どものパスポートの取得手続きを行います。

⑤健康保険の加入手続きを、親が働いている会社または市区町村役場で行います。

⑥児童手当を受給するための手続きを市区町村役場で行います。

⑦医療費助成(行政が医療費の自己負担額の一部を負担する制度)を受けるための申請を市区町村役場で行います。

お勧めの順番としては、まず市区町村役場に出生届を提出(①)し、必要な書類を受け取ってから、入管に永住申請を行う(②)ことです。もちろん、出生届受理証明書と住民票だけでは永住申請はできませんので、他の必要書類をそろえて申請します。また、母国への出生届(③)以降の手続きは、永住申請または在留資格取得申請(②)と並行して行うと効率的です。

申請に必要な書類

親が永住権を取得している場合、子どもが永住権を取得するためには、以下の書類を提出する必要があります。

①永住許可申請書

②在留資格取得許可申請書

③出生したことを証明する書類(出生届出受理証明書、母子手帳など)

④家族全員の記載がある住民票のコピー

⑤申請人を扶養する者の職業を証明する次のいずれかの資料
・親が会社に勤務している場合:在職証明書
・親が自営業を営んでいる場合:①確定申告書の控えのコピー、および、②営業許可書のコピー

⑥親の直近1年分の住民税の課税(または非課税)証明書、および納税証明書

⑦親の住民税の納付を証明するための預貯金通帳のコピー、領収証書など

⑧親の国税の納税証明書 その3(源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税)

⑨親の年金の支払いを証明する資料:直近1年間の「ねんきん定期便」または、ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面

➉親と子どもの健康保険被保険者証のコピー、または、国民健康保険被保険者証のコピー

⑪子供のパスポートのコピー(ある場合)

⑫親のパスポートのコピー

⑬親の在留カードのコピー

⑭身元保証書

⑮身元保証人の運転免許証のコピー

⑯了解書

⑰質問書

※子どもの永住許可申請において特徴的なのは、「理由書」の提出が義務付けられていない点です。

※出生証明書などの必要書類が入手できない場合、代替書類を提出することが可能です。

※戦争状態などにより、大使館や領事館でパスポートの取得に時間がかかる場合は、理由書でその旨を説明すれば問題ありません。

⑱セルフチェックシート
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-4.html

セルフチェックシートサンプル

⑲提出書類一覧表
https://www.moj.go.jp/isa/content/001422055.pdf

提出書類一覧表

永住許可申請の審査期間

永住許可申請の審査期間は、他の在留資格と同様に、申請時期、申請先の入国管理局、および申請者の状況によって異なります。
出入国在留管理庁のホームページでは、標準処理期間は4か月とされていますが、実際には1年以上かかるケースが多いです。
しかし、このような状況下でも審査期間を短縮する対策は存在します。

出入国在留管理庁では、案件を以下のAからDに振り分けています。

  • A案件:許可(交付)相当の案件
  • B案件:慎重な審査を要する案件
  • C案件:明らかに不許可相当の案件
  • D案件:資料の追完を要する案件

提出した資料がA案件に振り分けられれば、審査期間は短くなると担当行政書士は考えています。A案件にするためのポイントは以下の2つです。

  • 1.申請者自身が条件を満たしていること
  • 2.審査官が納得する資料をそろえ、構成を論理的に組み立てること

実際、担当行政書士が最近手掛けた案件では、わずか「5か月と8日」で家族全員の永住権を取得できました。

まとめ

永住者の子どもの永住申請は、「海外で出生した場合」と「日本で出生した場合」で要件や手続きが異なります。
日本で出生した子どもの永住申請の場合、他の永住申請に比べて要件が緩和されます。この場合のポイントは、子どもが出生した時点で親のどちらかが永住者であることです。

また、14日以内に住民票を取得し、30日以内に入国管理局へ申請を行う必要がありますので、時間に余裕がないことがわかります。早めに行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

もし30日以内に申請ができなかった場合でも、60日以内であれば「永住者の配偶者等」の在留資格を申請できますので、行政書士などの専門家に相談されてはいかがでしょうか。