はじめに
「日本人の配偶者ビザ(日本人の配偶者等)」や「永住者の配偶者ビザ(永住者の配偶者等)」を持つ外国人が永住権を申請する場合、他のビザから切り替える際に比べて要件が緩和されます。
比喩で説明すると:
これは「社員から正社員への昇格試験」のようなものです。通常の応募者(他のビザ保持者)は10年間の勤務実績が必要ですが、社長の家族(配偶者ビザ保持者)は3年で昇格試験を受けられる特典があるイメージです。
例えば、通常、永住許可申請には日本に10年間住むことが要件となりますが、配偶者ビザの場合は「結婚後3年以上経過し、日本に1年以上住むこと」で永住許可申請が可能です(2026年2月現在)。
このコラムでは、配偶者ビザから永住者ビザへの変更に必要な要件や申請書類などについて解説します。
配偶者ビザから永住ビザへ変更するメリット
大きく3つのメリットがあります。
1. 母国の国籍を維持したまま、日本で永住することができます
比喩で説明:
これは「二重パスポート」のようなものです。日本国籍を取得する「帰化」とは異なり、母国の国籍を保ったまま日本に永住できるため、「両方の国の良いところ取り」ができます。
2. 日本人配偶者と離婚または死別した場合でも、ビザの変更は必要ありません
比喩で説明:
配偶者ビザは「会社の社宅に住んでいる状態」です。離婚すると社宅を出なければなりませんが、永住権は「自分名義のマンション」を持つようなもので、配偶者との関係が変わっても住み続けられます。
3. 社会的信用が向上するため、住宅ローンなどの借り入れがしやすくなります
日本人と結婚してから永住権申請までのフロー
| ステップ | 内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| Step1 | 在留資格「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」を取得 | 2〜3か月 |
| Step2 | 永住権取得に必要な要件を満たす(婚姻生活3年+日本滞在1年) | 3年〜 |
| Step3 | 永住許可の申請を行う | 審査期間1年以上(東京入管の場合) |
永住権を取得するための要件
出入国在留管理庁のガイドラインによれば、日本の永住権を取得するための要件は次の3つです。
基本的な3要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 素行善良要件 | 法律を守り、日常生活で問題を起こさないこと |
| ② 独立生計要件 | 自分または配偶者に安定した収入があること |
| ③ 国益適合要件 | 日本にとって利益となる人物であること |
配偶者ビザから永住権を申請する際、②独立生計要件は求められず、③国益適合要件(日本にとってメリットがある人物かを判断する基準)を中心に審査されます。
具体的な7つの要件
要件1:実態を伴った結婚生活が3年以上継続し、加えて引き続き1年以上日本に在留していること
ポイント整理:
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 「婚姻生活が3年以上継続」の意味 |
必ずしも日本に3年以上住んでいる必要はありません。 例:海外1年10か月+日本1年2か月=合計3年でOK。 ただし、海外のみ3年間は不可。 |
| 「引き続き日本に在留」の意味 |
連続して日本に住み続けている状態。 × 90日以上日本を離れた場合 × 1年間に合計100日以上日本を離れた場合 |
比喩で説明:
「引き続き日本に在留」は、「ジムの定期会員」のようなものです。3か月以上行かなかったり、1年で100日以上休むと「実質的に利用していない」とみなされ、優遇措置が受けられなくなるのと同じです。
注意点:
1. 別居している場合の扱い
結婚していても別居している場合、実態がないと判断されるリスクがあります。ただし、単身赴任などの明確な理由を説明すれば問題ありません。
2. 必要な証拠資料
申請資料には、結婚に至った経緯や実際の生活状況が分かる資料を含める必要があります。
・結婚式の写真
・夫婦そろってのパーティの写真
・LINEでのやり取りの履歴
・家族旅行の写真
※最近はスマートフォンでの撮影が増えており、撮影日の判別が難しいケースが増えてきています。当事務所では、イベント会場など撮影した月日が明確な写真を推奨しております。
要件2:現在所有している在留資格の在留期間が3年以上であること
法律では、最長5年の在留期間が要件とされていますが、2026年2月現在、3年の在留期間でも問題ありません。
「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格を必ずしも有している必要はなく、他の在留資格でも要件緩和の恩恵を受けることができます。当事務所のお客様の中にも、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ方が、日本人の配偶者等の要件で永住許可申請を目指すケースが多く見られます。
重要なのは、実際に日本人や永住者との実態のある結婚生活を送っていることです。
要件3:素行が善良であること
「素行が善良」とは、主に以下の3つの要件を満たしていることを意味します。
比喩で説明:
素行善良要件は、「優良社員の昇進審査」のようなものです。会社で昇進するには「遅刻しない、ルールを守る、問題を起こさない」が基本ですよね。永住権も同じで、「法律を守り、税金を払い、交通違反をしない」といった日常的な信頼の積み重ねが評価されます。
1. 日本の法令に違反し、拘禁刑(懲役・禁固)や罰金刑を受けたことがないこと
犯罪に手を染めてしまった場合は、以下のおおよその期間が過ぎるまでは永住権の申請ができません。
| 刑罰の種類 | 申請可能になる時期 |
|---|---|
| 罰金を受けた場合 | 罰金を支払ってから5年間 |
| 執行猶予を受けた場合 | 猶予期間が満了してから5年間 |
| 懲役または禁錮の場合 | 刑務所から出所して10年間 |
2. 重大な交通違反や軽微な交通違反を繰り返していないこと
| 違反の種類 | 具体例 | 影響 |
|---|---|---|
| 重大な交通違反 | 無免許運転、酒気帯び運転、50キロ超過の速度違反 | 罰金支払い後、5年または10年経過しないと申請はできません |
| 軽微な交通違反 | 駐車違反、信号無視 | 5年間に5回以上で永住権取得が困難に |
最近、特に交通違反に対して厳格な傾向があります。当事務所に問い合わせに来られる方の中には、要件を完璧に満たしているにもかかわらず、交通違反の回数が多いために申請できない方がいらっしゃいます。また、2026年4月からは自転車に対する取り締まりも強化されます。例えば、スマートフォンを操作しながら自転車を走行すると、青切符が切られます。
確認方法:
交通違反の状況は、自動車安全運転センターから運転記録証明書を取り寄せることで確認できます。この運転記録証明書は任意資料として申請時に添付することをお勧めします。
3. 生活をする上で、違法行為や風紀を乱す行為を繰り返していないこと
要件4:世帯の収入が安定していること
配偶者ビザから永住権を申請する際の要件である「安定した収入」に関するポイントを以下に示します。
| 項目 | 基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本年収 | 300万円以上 | 申請者本人でなく配偶者の収入でも可 |
| 家族構成による加算 | 家族1人増えるごとに+70万円 |
実務上の目安(公式基準ではない) 例:4人家族=300万円+(3×70万円)=510万円 |
| 預貯金額 | あまり重要ではない | 収入の安定性が最優先ですが、預貯金額が大きければプラス材料になります |
| 非課税世帯 | 永住権取得は困難 | 国益要件に合致しないため |
注意:
配偶者ビザからの永住権取得は、他のビザからの変更に比べて年収300万円以下でも取得できる可能性があるとの意見もあります。
要件5:税金・年金・健康保険を遅延なく毎月支払っていること
税金に関する要件
住民税と所得税の両方を納付する必要があります。
| 税金の種類 | 必要な証明書 | 取得場所 |
|---|---|---|
| 住民税 |
直近3年分の課税(または非課税)証明書 および直近3年分の納税証明書 |
市区町村役場 |
| 所得税 |
納税証明書(その3 未納税額のない証明用) 対象: ① 所得税及び復興特別所得税 ② 申告所得税及び復興特別所得税 ③ 消費税及び地方消費税 ④ 相続税 ⑤ 贈与税 |
税務署 |
未納や遅延があった場合の対策
税金、年金、健康保険に未納期間があったり、支払いが遅延している場合は、以下の対策を講じた上で、支払いが完了した後に申請を行います。
| 対策項目 | 期間 |
|---|---|
| 税金 | 3年間、未払いおよび遅延なく毎月支払うこと |
| 年金・健康保険 | 2年間、未払いおよび遅延なく毎月支払うこと |
| 支払い方法の変更 | 口座引き落としやクレジットカード払いに変更することで、未納や支払い遅延を回避します |
| 理由書の提出 | 未納や遅延の理由、反省の意、今後の対策を記載します |
要件6:公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
具体的には、本人が伝染病に感染していたり、麻薬中毒であったり、近隣から苦情が寄せられるようなゴミ屋敷の状態であることが該当します。
要件7:身元保証人がいること
永住権申請には、身元保証書の提出が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 身元保証人の資格 | 日本人または永住者に限られます |
| 配偶者の場合 | 通常、日本人である配偶者が身元保証人になります |
| 身元保証の意味 | 申請者が法律違反した際に道義的責任を負うものであり、連帯保証人とは異なります |
配偶者ビザから永住許可申請をするための必要書類
以下の書類や資料を整え、管轄の入国管理局に提出してください。
本人確認に必要な書類
- 1.永住許可申請書
- 2.写真(縦4cm×横3cm)1枚
- 3.日本人配偶者の戸籍謄本(全部事項証明書)(申請者が日本人の配偶者の場合)
- 4.婚姻証明書のコピー (配偶者が外国人の場合)
- 5.申請者を含む家族全員の住民票(同居を証明するため)
- 6.申請者または申請者を扶養する人の職業を証明する書類
- ・会社員の場合 ⇒ 在職証明書
- ・自営業の場合 ⇒ 確定申告書控えのコピーおよび営業許可書のコピー(あれば)
- 7.パスポート(申請時に提示)
- 8.在留カード(申請時に提示)
収入や納税の証明に必要な書類
- 9.住民税納付の証明:直近3年分の課税証明書および納税証明書(市役所で取得)
※自営業の場合は、確定申告書控えのコピーや営業許可証 - 10.所得税納付の証明:直近3年分の通帳のコピー
- 11.納税証明書 その3(①源泉所得税および復興特別所得税、②申告所得税および復興特別所得税、③消費税および地方消費税、④相続税、⑤贈与税納付の証明、税務署で取得)
- 12.直近2年分の「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」の各月の年金記録の印刷画面
- 13.直近2年間の健康保険料の納付状況を証明する資料:
- ・会社員の場合 ⇒ 健康保険証のコピー
- ・自営業の場合 ⇒ 国民健康保険被保険者証のコピー、国民健康保険の納付証明書および領収書のコピー
- ・会社経営者の場合 ⇒ 社会保険料納入証明書
保証人に関する書類
- 14.身元保証書
- 15.保証人の運転免許証のコピー
身元保証に関する書類
- 16.了解書
- 17.親族一覧表
要件に該当することを確認する書類
- 18. セルフチェックシート
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-4.html

その他あればなお良い資料
- ・家族が写っている写真
- ・自宅の写真(玄関・リビング・寝室など)
- ・賃貸借契約書のコピー
- ・理由書
重要なポイント:
日本の配偶者が永住ビザを取得するには、日本人パートナーの協力が不可欠です。
また、配偶者ビザから永住許可申請を行う場合、必要書類に「理由書」が含まれていない点が、通常の永住申請とは異なります。
配偶者が日本人であるため、申請人に対する信頼感が高いのかもしれません。
永住許可申請の審査期間
永住許可申請の審査期間は、他の在留資格と同様に、申請時期、申請先の入国管理局、および申請者の状況によって異なります。
審査期間の現状(2024年12月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準処理期間(公式) | 4か月(出入国在留管理庁ホームページ記載) |
| 実際の審査期間 | 約1年半~2年(東京入管、2026年1月時点) |
審査期間が長期化している主な原因
1.審査の厳格化
2.提出が求められる書類の数の増加
3.コロナパンデミック以降の申請件数の増加
審査期間を短縮する方法
出入国在留管理庁作成の「入国・在留審査要領」の第8編「審査体制」によれば、審査手順において案件は以下のAからDに振り分けられます。
| 案件分類 | 内容 | 審査期間 |
|---|---|---|
| A案件 | 許可(交付)相当の案件 | 短い |
| B案件 | 慎重な審査を要する案件 | 長い |
| C案件 | 明らかに不許可相当の案件 | – |
| D案件 | 資料の追完を要する案件 | 長い |
つまり、提出した資料がA案件に振り分けられれば、審査期間は短くなります。
A案件にするためのポイント:
1.申請者が条件を満たすことに加え
2.審査官が納得する証拠資料を揃える
3.提出必須書類以外に、審査にプラスに作用する資料も提出する
実績例:
申請から許可まで1年以上かかると言われる昨今の状況においても、当事務所が手掛けた案件では、わずか「5か月余り」で家族全員の永住許可が下りた案件が複数あります。
手続きの際の注意点
注意点1:在留期間の更新について
永住許可申請の審査には1年以上かかることが多いです。審査中に在留期限が切れるとオーバーステイ(不法滞在)となります。
重要:
永住許可申請と在留資格の更新手続きは全く別のものです。永住許可申請中に在留期間が経過する場合は、在留期間満了日(ビザの有効期限の最終日)までに現在の配偶者ビザの在留期間更新許可申請を別途行う必要があります。
他の在留資格については、在留期間前に申請を行えば、その結果が出るまでに在留期間が過ぎても特例として在留期限後2か月以内は日本に留まることができます。しかし、永住権申請にはこの特例が適用されないため、注意が必要です。
注意点2:住所変更について
引っ越しをした場合、住民票の変更手続きを14日以内に行う必要があります。転入届を14日以内に提出しないと、審査でマイナス要素となります。市区町村役場で転入の届け出をすれば、入国管理局に届け出る必要はありません。
よくある質問
Q1
私は外国人の配偶者で、5年前に日本人と結婚し、外国で4年間過ごした後、1年前に日本に移住しました。通常の必要書類に加えて、特に準備しなければならないものはありますか?
必要な証明資料:
・5年前に結婚をした証拠資料と、外国での生活を証明する写真(生活がわかるもの)
・住民票(日本での1年間の生活を証明)
・在職証明書、年収見込証明書、給与明細書(十分な年収があることを証明)
Q2
配偶者は働いているため課税されていますが、配偶者ビザを持つ私は無職で住民税は非課税です。この場合、永住許可申請は可能ですか?
Q3
年収にアルバイトで得た収入を加えることはできますか?
Q4
日本人の夫は55歳で、私は配偶者ビザを持つ35歳です。私たちは5年前に結婚しましたが、私の在留期間は常に1年しか更新されません。そのため、永住権申請の条件である現行の在留資格期限が3年または5年であることを満たすことができません。今後、どのような対策を講じればよいでしょうか。
対策例:
1.在留資格を更新する際には、理由書でこれまでの経緯を詳細に説明することが重要です。時系列に沿った写真を用意すると、さらに効果的です。
2.親族が参加した結婚式の写真を添付
3.家庭での生活の様子を示す直近写真を添付
4.一緒に定期的にスポーツジムに通うなど、共通の活動を行っていることの証明
5.継続的なコミュニケーションの証拠(LINEの履歴など)
Q5
日本人の配偶者と別居中ですが、永住ビザを申請できますか?
別居している場合は、会社命令による単身赴任など、審査官を納得させるための十分な理由が必要です。
まとめ
永住権申請の完全チェックリスト【保存版】
最低限満たすべき7つの条件
| 項目 | 基準 | 確認方法 |
|---|---|---|
| ◇ 婚姻期間 | 結婚後3年以上 | 戸籍謄本・婚姻証明書 |
| ◇ 日本滞在 | 連続1年以上 | 住民票・パスポート |
| ◇ 在留期間 | 現在3年以上 | 在留カード |
| ◇ 収入 | 世帯年収300万円以上 | 課税証明書 |
| ◇ 納税状況 | 税金3年間未納・遅延なし | 納税証明書 |
| ◇ 年金・保険 | 2年間未納・遅延なし | ねんきん定期便・健康保険証 |
| ◇ 素行 | 犯罪歴・交通違反なし | 運転記録証明書 |
絶対にやってはいけないNG行動
・税金・年金・健康保険の支払い遅延(2年以内にあると審査に影響)
・交通違反の繰り返し(5年で5回以上はアウト)
・別居状態での申請(実態のない結婚とみなされる)
・書類不備での申請(審査期間が大幅に延びる、D案件に分類される)
審査期間を短縮する3つのコツ
1.完璧な書類準備 → A案件に分類され、5か月余りでの許可の実績あり
2.理由書の充実 → 結婚の経緯を具体的に説明
3.証拠資料の追加 → 結婚式の写真、LINEの履歴、家族写真など
要件まとめ(比較表)
| 比較項目 | 通常の永住許可申請 | 配偶者ビザからの申請 |
|---|---|---|
| 日本滞在期間 | 10年以上 | 1年以上 |
| 婚姻期間 | – | 3年以上 |
| 独立生計要件 | 必須 | 不要 |
| 年収基準 | 厳しい | 緩和(配偶者の収入でもOK) |
最終的なアドバイス
配偶者ビザから永住許可を申請する場合、他の在留資格に比べて要件が緩和されています。具体的には、結婚後3年以上が経過し、日本に1年以上居住していることが申請の条件です。
ただし、実際に婚姻生活を営んでいること、在留期間、素行要件など、いくつかの要件を満たす必要があります。
永住許可を得ることは容易ではありませんが、行政書士などの専門家を活用することで、永住権取得の夢を実現させましょう。
記事の正確性について:
本コラムの情報は2026年2月1日時点のものです。法令や運用方針は変更される可能性がありますので、申請前には必ず最新の情報を出入国在留管理庁の公式ウェブサイトでご確認ください。
お問い合わせ:
永住権申請についてご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

