中国人の永住権申請について解説

出入国在留管理庁によれば、2023年6月末現在、永住者の在留資格を持つ外国人は880,178人ですが、そのうち324,533人は中国人で、全体の36.9%を占めています。

また、日本に在留する富裕層の華僑も多く、今後も永住権を取得する中国人が増加することが予想されます。
中国人の場合、留学ビザで日本の大学に進学し、その後、技術・人文知識・国際業務ビザで就職し、時を経て永住ビザを取得するケースが多く見られます。

また、配偶者ビザを持つ配偶者や子どもが同時に永住許可申請を行うことも一般的です。担当の行政書士が会社勤めをしていた時の仕事仲間とその家族も、このルートで永住権を取得しました。

本コラムでは、中国人が永住権を取得するために必要な要件や書類について説明します。

中国人が永住ビザを取得するメリット

日本の永住権を取得すると、日本国内で永続的に住む権利を得ることができます。永住者は在留資格の更新が不要で、就労資格のように特定の職務に制限されることなく、自由に仕事を選ぶことができます。以下に詳細を整理してご紹介します。

1. 中国籍を変更することなく、日本で安定的に暮らせます。

2. 就労ビザのように在留期限の更新は必要ありません。

3. 様々な仕事を自由に選択できます。

技術・人文知識・国際業務ビザなどの就労系ビザでは職種が限定的ですが、永住ビザを取得すれば職種に制限がなくなり、転職や起業も容易になります。

4. 住宅ローンを組む選択肢が広がります。

就労系ビザを持つ外国人が住宅ローンを借りるのは難しく、多くの条件が課されます。しかし、永住者になることで、様々な要件をクリアしていると評価され、安定した生活を送ることができます。そのため、住宅ローンや融資を受けることが容易になり、賃貸住宅から夢のマイホームを購入することが可能になります。

5. 家族も永住許可申請ができます。

本人が永住許可申請を行う際、配偶者や子どもも比較的簡単に永住許可申請ができ、永住者となることができます。

6. 生活の安定性が増します。

配偶者と死別したり、離婚した場合でも、在留資格は取り消されません。

「技術・人文知識・国際業務」・および「経営管理」ビザからの永住許可申請に必要な要件

以下は永住許可申請に求められる3つの要件です。

① 素行が善良であること

② 独立した生計を営むのに足りる資産または技能を有すること

③ その者の永住が日本国の利益に合致すると認められること

具体的には、

・日本に10年以上連続して滞在していることが必要です。そのうち、就労ビザ(技能実習や特定技能1号を除く)または居住ビザで、少なくとも5年以上継続して在留していることが求められます。

・在留期限が3年以上であること。

・過去5年間の年収が300万円を下回ることが一度もないこと。また、扶養家族一人あたり70万円を加算する必要があります。

・直近5年の間に、地方税(住民税)や国税(所得税)の未納や支払い遅延がないこと。

・直近2年の間に、国民年金や国民健康保険の未納や支払い遅延がないこと。

・直近10年の間に、90日以上連続して出国したことがなく、年間100日以上日本を出国したことがないこと。

・懲役刑、禁固刑、または罰金刑を受けていないこと。

・直近5年の間に、駐車禁止などの軽微な交通違反を5回以上起こしていないこと。

・配偶者や子どもが資格外活動許可に違反していないこと。

・伝染病に感染しておらず、麻薬や覚せい剤の中毒者でないこと。

・日本人または永住者の身元保証人がいること。

「日本人の配偶者等、永住者の配偶者等」からの永住許可申請に必要な要件

「日本人の配偶者等、永住者の配偶者等」が永住許可申請を行う場合、素行善良要件と独立生計要件が免除され、充足すべき要件は以下の通りです。

・実態に即した結婚生活が3年以上続いており、そのうち1年は連続して日本に在留していること。子どもの場合は1年以上連続して日本に在留していること。

・在留期限が3年以上であること。

・過去5年間の年収が300万円を下回ったことが一度もないこと。また、扶養家族1人あたり70万円を加算すること。

・所得税及び直近3年間の住民税に未納や支払い遅延がないこと。

・直近過去2年間の間に、国民年金や国民健康保険の未納や支払い遅延がないこと。

・直近過去10年間の間に、90日以上続けて出国したこと、または年間100日以上日本を出国していたことがないこと。

・懲役刑、禁固刑、罰金刑を受けていないこと

・駐車禁止などの軽微な交通違反を、直近5年間に5回以上犯していないこと

・配偶者や子どもが資格外活動許可に違反していないこと

・伝染病に感染しておらず、麻薬や覚せい剤の中毒者でないこと

・日本人または永住者の身元保証人がいること

 ※定住者、高度専門職、みなし高度人材、難民の場合、在留期間の要件が以下のように緩和されます。
定住者:5年
高度専門職・みなし高度人材:80ポイント以上で1年、70ポイント以上で3年
難民:5年

永住許可申請に必要な提出書類

中国人が永住許可申請を行う際に必要な書類は以下の通りです。

・永住許可申請書

・理由書

・住民票

・在職証明書(会社員)、確定申告書控えのコピー(自営業)

・住民税の課税証明書、納税証明書

・所得税の納税証明書

・年金の納付を証明する書類

・健康保険被保険者証のコピー(会社員)、国民健康保険被保険者証のコピー(自営業)

・預貯金通帳のコピー

・パスポートと在留カード(提示のみ)

・身元保証書と身元保証人の運転免許証コピー

・了解書

・チェックシート

・戸籍謄本(日本人と結婚している場合)

<中国人特有の必要書類>

・公証書表紙

・結婚公証書

・出生公証書

・出生医学証明

※これらの書類には、日本語の翻訳も必要です。
これらの書類を提出することで、要件を満たしていることを証明します。

永住許可申請の進め方

1. 入国管理局のサイトや検索サイトで、永住許可申請に必要な要件を確認します。

2. 入国管理局のサイトから申請書類をダウンロードし、必要事項を記入した上で、必要な資料および有益な資料を収集します。

3. 住所を管轄する入国管理局に申請を行います。

4. 入国管理局から通知が届きます。

なお、首都圏の入国管理局では、近年、審査期間が長期化する傾向があり、1年以上かかることも頻繁に起こります。

永住許可申請中の注意点

・申請中の転職は避けた方が良いです。

・住所が変更になった場合は、市役所だけでなく、入国管理局にも届け出を行ってください。

・入国管理局から追加書類の要請があった場合は、迅速に対応してください。追加資料の提出期限は約1週間しかありません。

永住許可申請後の注意点

・交通違反を含む法律や社会のルールを遵守します。

・特に税金や社会保険料(年金、健康保険)の未納や納付遅延に注意を払います。

 ※2024年3月に入管法改正案が閣議決定され、永住許可の取り消し事由が拡大されました。具体的には、「税金や保険料を故意に納めない場合、永住許可を取り消すことが可能になる」という内容です。これに対し、神奈川県内の中国人で構成される横浜華僑総会は、「永住者の生活や人権を脅かす」として、規定の削除を求めています。

・7年ごとに在留カードを更新します。

行政書士へ相談するメリット

永住許可の申請には、多くの要件をクリアし、さまざまな提出書類を用意することが求められます。日本語が得意で手続きに不安を感じない中国人の方は、入国管理局や検索サイトを参考にして自分で申請を進めることも可能です。

ただし、永住許可申請では、整合性があり論理的な展開で理由書を作成することが非常に重要です。理由書の作成については、専門家である行政書士に相談してみることをお勧めします。

まとめ

中国人が日本で長期間生活するためには、永住ビザの取得が最も重要なポイントとなります。永住権を取得することで、在留期限の更新が不要になり、職種の制限なく働くことができ、住宅ローンの選択肢も広がります。また、家族も同時に永住許可を申請できるため、安定した生活を築くことが可能です。

申請には専門知識が必要で、多くの要件をクリアし、書類の提出が求められます。特に、審査官を納得させる理由書の作成が重要です。入管管理局や検索サイトで手続きを確認し、不明点がある場合は専門の行政書士に相談することをお勧めします。新たな未来に向けて進み続けてください。