はじめに
通常、永住権の許可申請を行うには、日本に10年以上住んでいる必要があります。しかし、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」の在留資格を持つ外国人は、「高度専門職」の高度人材ポイント制を活用することで、永住申請の居住要件が大幅に緩和され、3年または1年後に申請が可能です。
高度人材ポイントが70点以上ある「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」の在留資格を持つ外国人は、日本にとって有益な存在として認識され、「みなし高度専門職」と呼ばれるようになりました。この制度は2019年に導入されました。
本コラムでは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格から永住者ビザへの変更に必要な要件や申請書類について解説します。
高度専門職とみなし高度専門職との違い
みなし高度専門職が受けられる優遇措置は、居住要件の緩和のみです。そのため、高度専門職に認められている5年の在留期間、複数の職務活動、配偶者の就労、親の帯同、家事使用人の帯同といった特典は、みなし高度専門職には適用されません。
「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」から永住権を取得するための要件
1. 法律上の要件
1)素行が善良であること。法令を遵守し、日常生活において社会的に非難される行動をとらず、品行方正である必要があります。
2)安定した収入または財産を有していること。年収の目安は300万円以上であり、扶養家族がいる場合は1人につき追加で約70万円が必要です。
3)日本国内において3年以上、または1年以上継続して居住していること。
4)罰金刑または懲役刑を受けた経歴がないこと。また、重大な交通違反を起こしていないことが求められます。軽微な違反であっても、過去5年間で5回以上、直近2年間で2回以上繰り返すと永住許可の取得が困難になります。また、家族が週28時間を超える資格外活動を行っていないことも重要です。
5)住民税を期限内に納付していること:3年分または1年分の納税(または非課税)証明書を市役所で取得します。
6)所得税を期限内に納付していること:納税証明書(その3)で5つの税を納付していることを証明します。
7)公的年金を、2年間、未払いまたは遅延することなく毎月支払っていることを証明します。
8)健康保険を、2年間、未払いまたは遅延することなく毎月支払っていることを証明します。
9)出張や母国への帰省などで、日本を3か月以上連続して離れたことがないこと。また、年間を通じて合計100日以上日本国外に滞在していないことが求められます。
10)3年または5年の在留資格(ビザ)を所持していること。
11)公衆衛生上の観点から有害である可能性がないこと。伝染病の患者や覚せい剤中毒者の場合、申請は認められません。また、自宅がゴミ屋敷状態で近隣に迷惑をかけている場合も、申請ができません。
12)日本人または永住者の身元保証人がいること。
13)経営管理ビザから永住権申請を行う場合は、経営する企業の財務状況も重要です。赤字経営が続いていたり、債務超過に陥っている場合は、独立生計要件を満たしていないとみなされます。このため、財政が安定してから永住権の申請をすることをお勧めします。
2. みなし高度人材特有の要件
1)高度専門職ポイント計算表において、ポイントが70点以上の外国人の場合
a.申請時にポイントが70点以上であること
b.3年間連続してポイントが70点以上を保っていること
c.3年間引き続き日本に居住していること
2)高度専門職ポイント計算表において、ポイントが80点以上の外国人の場合
a.申請時にポイントが80点以上であること
b.1年間連続してポイントが80点以上を維持していること
c.1年間引き続き日本に居住していること
高度専門職ポイントの計算方法は?
高度人材ポイント制のポイント計算は、ポイント計算表を使用して行います。主な項目は以下の通りです。
また、獲得したポイントを証明するための資料の提出が求められます。該当項目があっても、証明資料を用意できない場合はポイントが認められません。
高度専門職ポイントの項目
1.学歴:大学卒業以上
2.職歴:3年以上
3.年収:400万円以上
4.年齢:39歳以下
5.研究実績:特許、学術論文など
6.国家資格:業務独占資格または名称独占資格
7.特別加算:契約機関、日本語能力など
※高度専門職ポイント計算表 Point Calculation Table
日本語 https://www.moj.go.jp/isa/content/930001673.xls
English https://www.moj.go.jp/isa/content/001398888.xls
出典:出入国在留管理庁
注意点
特に留意すべきなのは、「職歴」と「年収」のポイント計算です。
「職歴」ポイントに関する注意事項
a.職歴は過去の就業年数ではなく、現在日本で従事している仕事と同様の実務経験を指します。
b.職歴に含めることができるのは、正社員、契約社員、派遣社員などであり、パートやアルバイトは対象外です。
c.会社経営者の場合、「高度専門職1号ハ」の申請時のみ、経営経験を職歴に含めることができます。「高度専門職1号イ」または「ロ」の申請時には、関連する実務経験として職歴を含めることはできません。
d.個人事業主の場合、母国の個人事業開業届出書などに相当する書類で、個人事業主であることを証明する必要があります。
「年収」ポイントに関する注意事項
a.基本給と固定残業代のみが年収として確実に認められます。
b.残業代や賞与(ボーナス)は変動するため、年収には含まれません。
c.賞与(ボーナス)は金額が確定していないため、会社から「収入見込み証明書」を発行してもらうことで収入として認められます。
高度専門職ビザから永住許可申請をするための必要書類
1.永住許可申請書
2.写真
3.理由書
4.世帯全員の住民票
5.職業を証明する資料
(1)会社等に勤務している場合:在職証明書
(2)自営業等の場合:申請人の確定申告書控えのコピーまたは登記事項証明書、営業許可書のコピー(該当する場合)
6.住民税の納付状況を証明する資料
a.直近3年分または1年分の住民税の課税(または非課税)証明書および納税証明書
b.直近3年間または1年間に住民税を適切な時期に納付していることを証明する預貯金通帳のコピーや領収証書
7.国税の納付状況を確認するための納税証明書(その3):源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税
8.直近2年間の年金の納付状況を証明する「ねんきん定期便」または、ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面、国民年金の方は国民年金保険料領収証書のコピー
9. 直近2年間の公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料:健康保険被保険者証のコピーまたは国民健康保険被保険者証のコピー
※令和6年12月2日から健康保険証はマイナンバーカードと一体化されたもの(「マイナ保険証」)になります。したがって、健康保険証の有効期限が切れた場合や有効期限前に転職・転居などで保険者の異動が生じた場合は、以下の書類を提出してください。
(1)マイナ保険証がある方:マイナポータルの健康保険証情報に記載の「資格取得年月日」が確認できる画面のコピー(3か月以内のもの)
(2)マイナ保険証がない方:「資格確認証」のコピー
10.高度専門職ポイント計算表:①申請時点でのポイント計算結果、②3年前または1年前の時点でのポイント計算結果
11.ポイント計算の各項目を証明する資料:学歴証明書、職歴証明書、年収証明書など
12.資産を証明する資料:預貯金通帳のコピーまたは不動産の登記事項証明書
13.パスポートまたは在留資格証明書 (提示のみ)
14.在留カード (提示のみ)
15.身元保証書
16.身元保証人の運転免許証のコピー
17.了解書
18.表彰状、感謝状、叙勲書など、日本への貢献を示す資料(該当する場合)
19.経営管理ビザの場合は、会社に関する資料として以下の書類も提出します。
・会社登記事項証明書
・会社定款のコピー
・営業許可書のコピー
・直近3年分の決算書の控えのコピー
・会社案内やホームページのコピー
20.セルフチェックシート
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-4.html
永住許可申請の審査期間
永住許可申請の審査期間は、申請の時期や入国管理局の混雑状況、申請者の状況によって異なります。2024年12月現在、審査が厳格化され、提出書類が増加し、さらにコロナ禍以降の申請件数の増加により、標準処理期間は1年以上かかる場合が多く見られます。しかし、こうした状況でも審査期間を短縮する方法は存在します。
出入国在留管理庁の「入国・在留審査要領」第8編「審査体制」では、審査手順において案件が以下のAからDに分類されます:
A案件:許可が見込まれる案件
B案件:慎重な審査が必要な案件
C案件:明らかに不許可とされる案件
D案件:追加資料が必要な案件
提出資料がA案件に分類されれば、審査期間を短縮できると担当の行政書士は考えています。A案件にするためには、申請者が必要条件を満たすことに加え、審査官を納得させる証拠資料を周到に用意し、論理的な構成を心がけることが重要です。
また、永住許可申請では追加資料を求められることが多いと言われています。追加資料の請求があると、資料を提出するまで審査が停止するため、これが審査期間の長期化の原因となります。そのため、事前に審査官が求める資料を的確にそろえて提出することが重要です。
実際に、担当の行政書士が手掛けた「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つみなし高度専門職の案件では、家族全員が「5か月と8日」で永住許可を取得した例があります。
まとめ
在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」を持つ外国人が、日本で永住ビザを取得するためには、高度専門職ポイント制度を活用できます。この制度を利用することで、通常10年以上の居住要件が1年または3年に短縮されます。
申請にはさまざまな条件を満たし、多くの提出書類をそろえる必要がありますが、1年または3年で永住権を取得できることは非常に大きなメリットです。
このチャンスを活かし、日本での未来を明るいものにしてください。