永住ビザの審査において、扶養家族がいる場合は、主に「扶養者人数に応じた適正な収入があるか」と「実際に扶養家族を養っているか」の二点が審査されます。
本コラムでは、永住許可申請を行う際に求められる収入や適正な扶養家族の人数について詳しく解説します。
扶養者とは
扶養家族とは、申請者が養っている家族を指します。扶養家族として認められるためには、税務署、市区町村役場、社会保険事務所に登録する必要があります。一般的には、申請者と同居している配偶者や、収入が一定額に達していない子どもが扶養家族として認められます。
この場合、彼らを扶養に入れることで控除を受けることができます。また、同居していない場合でも、母国に住んでいる両親の生活費を支援している場合、両親も扶養家族に加えることができます。
つまり、配偶者や子どもだけでなく、条件を満たせば、6親等内の血族や3親等内の姻族も扶養家族として認められます。
扶養家族に関する情報は、源泉徴収票や納税証明書に記載されており、住民税や所得税などの税金の対象となる扶養人数が決まります。
扶養人数に応じた適正な年収があるか?
永住ビザの審査において、扶養家族がいる場合、「扶養家族を養えるだけの収入があるかどうか」が重要な審査項目となります。もし外国に住んでいる家族が扶養を必要としており、申請者がその家族に送金を行っている場合は、扶養家族を養うだけの十分な収入があることが必要です。
必要な年収は扶養家族の人数によって異なります。例えば、単身で生活している場合の目安は300万円です。さらに、扶養者1人につき約70万円の年収が加算されます。したがって、日本に住む申請者が配偶者と子ども1人、そして外国に住む両親2人を扶養している場合、年収の目安は580万円程度となります。
技術・人文知識・国際業務などの在留資格で申請する場合、過去5年分の収入が審査対象となります。一方、高度専門職の申請者の場合は、ポイントに応じて過去3年または1年の収入が基準となります。
その上、も安定した収入を得る見込みがあるかどうかが、審査のポイントとなります。
適切な扶養が行われているか?
扶養家族がいる場合、収入面での扶養能力だけでなく、「実際に扶養家族を養っているのか」という点も重要な審査項目となります。扶養家族を税金の非課税目的で申告する場合、その扶養が適正かどうかが重要な問題となります。
そのため、海外の親族の就労状況や送金記録を提出する必要があります。扶養家族が多すぎると、審査官に不適切な税金対策と疑われる可能性が高まり、永住審査において不利になることがあります。
特に、母国に住む親や兄弟を扶養家族に加えた場合、その扶養が適正でないと判断され、国益要件を満たしていないと見なされるため、不許可となる可能性があります。
扶養家族に関する送金額の目安は、家族一人につき年間38万円程度です。例えば、両親2人を扶養家族に加える場合、年間で78万円の送金実績を証明することが求められます。
月に換算すると約6万円となり、この送金記録は永住ビザ申請時に過去5年分(就労ビザの場合)、または過去3年分(配偶者ビザの場合)、または過去1年または3年分(高度専門職の場合)の送金記録を提出する必要があります。送金記録を提出していない場合、入国管理局から資料提出通知が届くことがあります。
実際、扶養控除を受けるためには、税務署に対して扶養控除申告書を提出するだけでなく、親族関係を証明する書類(戸籍の附票やパスポートのコピーなど)や送金に関する書類(送金記録やクレジットカードの利用明細など)も必要です。
扶養家族の人数を訂正するには
扶養家族を誤って申告していた場合や、外国に住む家族に当初送金していたが、その後必要がなくなった場合は、修正申告を行うことができます。
扶養家族を外す手続きは、まず会社に報告し、その後税務署でさかのぼって修正申告を行います。
修正申告後、その場で所得税の納付書が発行され、そのまま納付することができます。数か月後に市町村役場から未納分の住民税納付書が届きます。急ぎの場合は、直接市税事務所に行き、確定申告書の控えを提示することで納付することも可能です。
ただし、修正を行ったからといって、必ずしも永住申請が許可されるわけではありません。担当の行政書士は、修正申告後すぐに永住許可申請を行うべきではないと考えています。
扶養家族を外した場合、審査官が「永住権を得るために扶養家族を外したのではないか」と疑念を抱く可能性があるためです。そのため、修正申告後は2~3年の期間を空けてから申請を行うことが望ましいとされています。
扶養家族が多いことを理由書で説明
同居していない扶養家族が多い場合、送金記録や面倒を見ていることを示す資料があり、年収要件を満たしていれば問題ありません。ただし、この場合でも扶養家族が多い理由を理由書で説明することをお勧めします。
以下に例を示します。
高齢や健康上の問題を抱えた親族の支援
外国に住む親族の中には、高齢や健康上の問題を抱え、生活支援が必要な者がいます。
文化的背景による相互扶養の責任
母国では、家族間での相互扶養の文化が根強く、困難な状況にある親族を支えることが私の責任です。
経済的支援の必要性
親族が経済的な困難に直面しており、教育費用や生活費の支援が必要であること。
まとめ
永住ビザ申請において、扶養家族の申告は重要なポイントです。扶養家族がいる場合、収入が十分であることや実際に扶養を行っていることが審査の基準となります。そのため、適正な扶養人数と収入を確保することが求められます。
誤って扶養家族を申告した場合は、修正申告を行い、税務署や市町村役場に届け出る必要があります。ただし、修正後すぐに永住申請を行うことは避け、2〜3年の期間を空けることが望ましいです。
扶養家族が多い場合は、理由書を添付して支援の必要性を説明することをお勧めします。適正な扶養を申告し、永住申請を行う前に必要な修正を行い、審査に備えましょう。
専門家である行政書士に相談してみるのもよいでしょう。