永住権と帰化の違いを徹底解説-国籍・権利など

日本で永続的に暮らすためには、永住権と帰化の2つの選択肢があります。永住権は外国籍のまま日本に長期滞在するための制度であり、帰化は日本国籍に変更する制度です。このコラムでは、永住権と帰化の違いや、申請に必要な要件と手続き方法、さらにそれぞれのメリットとデメリットについて詳しく解説します。

永住権と帰化の違い

永住権とは、外国人が外国籍のまま日本に永住するための権利です。これにより、日本での就労や住居の選択に制限が少なく、半永久的に日本に住むことができます。

永住権の主なポイント

・申請者の国籍は維持される。

・就労に関する制限が少なく、日本人と同等の働く権利が得られる。

・納税や行政手続きなどの義務も日本人と同様に発生する。

・在留期限の変更や更新の手続きが不要になる(ただし、7年ごとに在留カードの更新は必要)。

・住居の賃貸やローンの借り入れ時に有利に働く。

帰化とは、外国籍から日本国籍への変更手続きであり、母国の国籍を放棄する必要があります。これにより、日本国民としての権利と義務を持ち、選挙権や被選挙権などほぼすべての権利が得られます。

帰化の主なポイント

帰化をすると外国籍はなくなり、日本国籍を取得します。ただし、母国の国籍を放棄するため元の国籍に戻ることは難しい場合が多いです。

・日本人となるため,戸籍が作成され,選挙権や被選挙権が与えられます。

・就労に関する制限がなくなり,公的機関で働くことも可能になります。

・日本のパスポートを取得でき,ビザの更新が不要となり,強制退去の心配もなくなります。

・日本にずっと住み続ける強い意思がある場合、帰化が便利です。

このように、永住権は外国籍のまま日本に滞在するための資格であり、帰化は日本国籍を取得することで外国籍を放棄する手続きを指します。

永住権と帰化の要件

以下は、永住権と帰化を申請する際の必須要件です。

永住権取得の要件

・引き続き10年以上日本に在留していること(例外あり)。この期間中に、就労資格または居住資格を持って「引き続き5年以上在留」している必要があります。

・素行が善良であること。

・独立して生計を立てられるだけの年収(最低300万円)または資産があること。

・法令を遵守していること。

・罰金刑や懲役刑を受けていないこと

・税金や社会保険などの公的義務を履行していること

帰化取得の要件

・直近5年間引き続き日本に住んでいること(例外あり)。そのうち3年以上は、正社員、契約社員、または派遣社員として就労していること(住所要件)。

・18歳以上であること(能力要件)。

・素行が善良であること(素行要件)。

・申請者自身、配偶者や親族の収入や財産により、安定した生活が送れること(生計要件)。

・無国籍であるか、帰化により母国の国籍を喪失できること(重国籍防止条件)。

・日本政府の破壊を企てたり、そのような団体を結成または加入していないこと(憲法遵守条件)。

・日常生活に支障のない日本語能力(会話および読み書き)があること(語学要件)。

永住権と帰化の手続きの違い

永住権申請

申請先:入国管理局

永住申請に必要な書類

・永住許可申請書

・写真

・理由書

・婚姻証明書など身分関係を証明する資料(家族滞在の場合)

・申請人を含む家族全員(世帯)の住民票

・在籍証明書など申請人または申請人を扶養する方の職業を証明する次のいずれかの資料

・直近5年分の課税証明書と納税証明書

・納税証明書(その3)

・預貯金通帳のコピーなど所得を証明するもの

・年金2年分の証明資料

・健康保険証のコピー

・申請人の親族一覧表(日本人の配偶者等、定住者の配偶者等の場合)

・パスポート(提示)

・在留カード(提示)

・身元保証書および保証人の運転免許証のコピー

・了解書

・チェックシート

帰化申請

申請先:地方法務局

帰化申請に必要な書類

・身分関係を証する書面

・居住歴を証する書面

・運転記録証明書

・資産・収入に関する各種証明書

・納税に関する各種証明書

・社会保険の納付証明書

・在学を証する書面または最終学歴を証する書面

・技能・資格を証する書面(日本語能力試験受験者は成績証明書も)

・帰化相談質問票

・帰化相談必要書類の確認表

永住権と帰化のメリット・デメリット

永住権のメリット

・日本に無期限に在留できる

・自国の国籍を保持したまま日本に住むことができる

・自由に就労やビジネス活動が可能

・住宅ローンの申請がしやすくなる

永住権のデメリット

・選挙権がないなどの制約がある

・再入国許可を取得せずに出国した場合など,特定の条件で権利が剥奪されることがある

帰化のメリット

・日本国籍を取得し、国民としての権利や自由を享受できる

・ビザの取得や更新手続きが不要になる

・日本のパスポートを取得でき、ビザなしで多くの国に渡航可能になる

・公的機関に就職できる

・日本名を取得できる

帰化のデメリット

・自国の国籍を放棄する必要がある

・国籍を抜けると母国の国籍に戻るのが難しくなる

・母国への帰国時にビザが必要となる場合がある

以上が、永住権と帰化の主なメリット・デメリットです。

永住権と帰化の比較

以下は永住権と帰化の主な違いとなります。

科目 永住権 帰化
申請先 入国管理局 法務局
審査期間(申請~許可) 6か月~1年4か月 1~2年
国籍 母国の国籍を維持 母国の国籍を喪失し、日本国籍を取得
戸籍 取得できない 取得できる
名前 日本人の名前は持てない 日本人の名前が持てる
パスポート 母国のパスポートのまま 日本のパスポート
在留期限 なし なし
在留資格の更新 あり(7年ごと) なし
母国への帰国 パスポートで容易に帰国できる 査証等の手続きが必要な場合がある
再入国手続き 必要 必要なし
権利取消しの可能性 大きな犯罪を起こせば取り消される なし
強制退去処分 あり なし
職業の制限 なし なし
親の呼び寄せ 原則できない できる
公的機関への就職 非常に少ない できる
参政権 なし あり
相対的な要件の厳しさ 帰化より厳しい 永住権よりも厳しくない
居住要件(原則) 継続して10年間在留が必要 継続して5年間在留が必要
最後の在留期間の要件 3年(法律上は5年) 3年
独立生計要件 あり あり
素行善良要件 あり あり
納税義務 あり あり
年金加入義務 あり あり
健康保険加入義務 あり あり
能力要件 必要なし 10歳以上で行為能力を有すること
日本語能力要件 必要なし 必要

まとめ

永住権と帰化の選択は、申請者の状況によって異なります。
永住権を取得すると、母国の国籍を保持したまま日本に住み続けることができます。また、在留資格の更新が不要となるため、手続きが簡略化されます。さらに、永住権を持つことで、住宅ローンや賃貸契約が容易になるというメリットもあります。

一方、帰化を取得すると、日本国籍を得ることができ、日本人としての権利と義務を持つことになります。これにより、選挙権や被選挙権が与えられ、公務員として勤務することも可能になります。長期的に日本に住む意思があり、日本名を取得したい場合には、帰化が有利な選択となるでしょう。

どちらの選択をするかは、あなたの現在の状況や将来の計画に基づいて慎重に検討する必要があります。迷った際には、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。