「永住権取得に年収はいくら必要か?」という疑問を多くの外国人が抱いています。永住ビザの申請には「独立した生計を営む資産や技能」が求められますが、入管法や永住許可のガイドラインには明確な年収基準が記載されていません。
また、必要とされる年収は個人個人の状況によって異なります。
申請人が就労ビザで働く単身者の場合
(1) 典型的な年収要件
永住ビザを申請する際、就労ビザで働いている独身の外国人の目安年収は300万円以上とされています。ただし、この300万円はあくまでも目安であり、申請者の居住地域(都心と地方)や住居状況(持ち家と借家)によっては、年収が300万円未満でも許可される可能性があります。
さらに、永住申請では直近の収入状況が重要視されるため、年収300万円以上の期間がどれだけ継続しているか(原則5年間)が審査のポイントとなります。
(2) 転職が永住許可申請に与える影響
転職を行う際、転職活動期間中は無職となるため、収入がゼロになります。さらに、新しい職場での勤務が開始しても、初任給が支給されるまでに一定の時間が必要です。
また、転職直後に永住申請を行うと、審査官は申請者の収入の安定性や継続性を確認するため、厳格な審査を行う傾向にあります。たとえ年収が300万円以上であったとしても、収入が不安定であると判断された場合、不許可となる可能性があります。
一方で、以下の3つのケースでは、転職がプラスに働く場合もあります。
・年収が大幅に増加した場合
・派遣社員から正社員へ転職した場合
・一般社員から管理職へ昇進した場合
申請人が就労ビザで、配偶者や子どもが家族滞在ビザの場合
(1) 典型的な年収要件
日本で就労ビザを持つ申請者が配偶者や子どもを扶養している場合、生活費の負担が現実的に増えるため、永住許可申請における最低年収基準も高くなります。一般的には、扶養家族1人あたり70万円が追加されるとされています。
例えば:
・配偶者だけを扶養している場合:370万円(300万円+70万円)
・配偶者と子ども3人を扶養している場合:580万円(300万円+70万円×4)
ただし、この金額を満たしても永住権が許可されるわけではなく、他の経済要素も考慮され、総合的に判断されます。
(2) 配偶者のアルバイト収入
配偶者が「家族滞在ビザ」を持ち、資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合、その収入は永住許可の収入要件に含めることができません。これは、アルバイトが安定した収入とみなされないためです。
母国にいる家族を扶養に入れている場合
(1) 扶養に加えることができる海外在住の家族
海外に住む家族を扶養に入れることは可能ですが、継続的に生活費を送金していることが必要です。
扶養に加えることができる家族は以下の通りです:
・配偶者
・子ども
・両親
・6親等以内の血族(一定の要件あり)
・3親等以内の姻族(一定の要件あり)
(2) 海外扶養家族がいる場合の年収要件
海外に住む家族を扶養に加えている場合、日本で在留している配偶者や子どもと同様に、1人あたり70万円が年収要件に追加されます。
・母国に住む両親2人を扶養している場合:440万円(300万円+70万円×2)
・母国に住む両親2人と、日本に在留する配偶者および子ども3人を扶養している場合:720万円(300万円+70万円×6)
※母国にいる家族を扶養に加えたにもかかわらず送金をしていない場合、法律違反となり、永住許可申請が不許可となる可能性が高くなります。この場合、税務署で修正申告を行う必要があります。
配偶者が日本人である場合
(1) 日本人の配偶者や実子がいる場合の要件
日本人と結婚している、または日本人との間に実子がいる外国人は、過去3年間または1年間の年収で審査が行われます。
また、独立生計要件は求められていないため、申請者本人の年収が300万円に満たなくても、配偶者(日本人または永住者)の年収が300万円以上であれば、永住許可が認められる可能性があります。
(2) 日本人の配偶者のアルバイト収入
申請者がアルバイトで得た収入は、世帯年収に合算できます。この点は、家族滞在ビザとは異なります。
(3) 夫が海外で収入を得ている場合
外国人の夫が日本国内で収入を得ていなくても、海外で収入を得ており、その収入を証明できれば永住権を取得することが可能です。
夫婦がともに就労ビザで働いている場合
1.夫婦がともに就労ビザを持ち、働いている場合、収入を「世帯年収」として合算できます。例えば、夫の年収が290万円、妻の年収が270万円の場合、それぞれの年収では300万円をクリアできていませんが、合計で560万円となるため、永住許可申請が可能です。
2.一方、夫婦で300万円の世帯年収要件を満たしていても、申請者の年収が極端に低い場合、「独立生計要件を満たしていない」と判断され、不許可となる可能性があります。
年収の証明
1. 必要な年収期間の数え方
単身者の場合、過去5年間のすべての年収が300万円を超えている必要があります。5年のうち、1年でも300万円を下回ると、よほどの理由がない限り永住許可申請が難しくなります。
2. 年収の証明方法
過去5年分の住民税の課税証明書と納税証明書を、1月1日時点で住民登録をした市町村役場で入手し、発行から3か月以内に入国管理局に提出します。
3. 必要な課税証明書の期間
条件 | 課税証明書の期間 |
---|---|
就労系ビザの保持者 | 過去5年分 |
日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者(結婚後に海外在住で、婚姻期間が3年以上ある場合は、1年分で構いません) | 過去3年分 |
日本人の実子(特別養子縁組を含む)、永住者の実子、特別永住者の実子 | 過去1年分 |
高度人材ポイント70点以上 | 過去3年分 |
高度人材ポイント80点以上 | 過去1年分 |
4. 直近年度の収入を証明する際の注意点
永住許可申請の最適な提出時期は、6月または7月です。これは、前年度の納税額が5月中旬に決定し、納税証明書が6月上旬から下旬に発行されるためです。ただし、課税証明書と源泉徴収票を組み合わせることで、直近年度の収入を証明することが可能です。
<提出時期>
1.1月~5月に申請する場合
前々年分までの納税証明書と前年分の源泉徴収票を含めてを提出し、6月~7月に前年の納税証明書を追加提出します。
2.7月~12月に申請する場合
発行済みの前年分の納税証明書を含めて提出します。
担当行政書士が考える収入を改善すための具体策
<最初に考えること>
1. 現在勤務している会社で給与を増やす工夫をする
例:①営業などインセンティブが得られる職種に変わる、②仕事量を増やし残業代を稼ぐ
2. 副業やフリーランスで収入を増やす
例:スキルを活かしてフリーランスとして仕事を受注する
3. 母国に住む家族を扶養に加えていた場合、扶養を取り消す
4. 配偶者も技術・人文知識・国際業務の在留資格に変更し、収入を得る
5. 理由書や職務経歴書に、近い将来収入がアップする理由を記載する
<次に考えること>
6. 転職により高収入を目指す
7. 母国の親や親せきから経済的援助を受ける
8. 不動産投資や株式などで収入を増やす
9. 生活費を見直し、貯蓄を増やす
10. 資格を取得して収入を増やす
<ポイント>
上記の施策を組み合わせることで、「将来の安定した収入が見込まれる」ことを審査官に納得してもらうことが最も重要です。
まとめ
永住許可申請において、年収は重要な審査基準の一つです。例えば、単身者の場合、目安として年収300万円以上が求められます。扶養家族がいる場合や海外の家族を扶養している場合は、年収要件が高くなり、扶養家族1人につき70万円の追加収入が必要です。
ただし、この金額は絶対に必要というわけではありません。重要なのは、安定した将来の収入を見込むことができる点です。たとえ今すぐに基準を満たしていなくても、時間をかけて収入を増やす努力を続ければ、永住許可の道は開けます。諦めずに着実に準備を進めることで、夢の永住権取得に近づくことができます。希望を持って、一歩ずつ前進していきましょう。