永住権取得における貯金の役割

日本での永住許可を取得するためには、収入や資産に関する要件が設けられています。審査において重要視されるのは、今後も日本で安定的かつ継続的に生活できるかどうかです。そのため、永住許可の審査では必ずしも預貯金の額が重視されるわけではありません。

重要なのは、毎月安定した収入があることです。預貯金がなくても、毎月の収入が安定しており、その収入で安定した生活ができるのであれば、永住許可が認められる可能性は十分にあります。

永住許可に必要な貯金額

永住権の審査において、貯金額の明確な基準は設けられていませんが、一定の貯金があることは望ましいことです。安定した収入が確認できれば、貯金額が少なくても問題ありませんが、一定の貯金があることで審査における評価が高まる可能性が十分に考えられます。
所得相応の貯金を保持していることは、経済の基盤が安定していることを示すため、審査において有利です。

具体的な貯金額の目安としては、最低でも半年間は家族全員が無収入で生活できる金額が望ましいです。さらに、1年間無収入でも生活可能な額があれば、より安心です。ただし、必要な貯金額は勤務先の会社規模、勤続年数、家族構成などの状況によって異なるため、個々の状況に基づいて決定されます。とはいえ、総務省の家計調査によれば、単身者の場合、月間必要額は17万円であり、年間200万円ほどの貯金額となります。また、家族4人の場合、月間必要額は32万円で、年間380万円ほどの貯金があれば安心です。

貯金が不足している場合、親からお金を借りて残高を増やすケースがありますが、急な大金の入金は、審査官には「永住権取得を目的とした不自然な増額」と見なされる可能性があるため、あまり好ましくありません。この行動は、素行不良とみなされることもあるからです。もし親からの支援が必要な場合は、「子どもの教育資金として親から借り入れた」といたような具体的かつ正当な理由が必要です。

貯金額より大事な年収額

永住申請においては、年収が非常に重要視されます。その理由は、年収が申請人が日本で独立して安定した生活を送ることができるかどうか、すなわち将来的に生活保護を受給し公共の負担となることがないかを判断する基準となるからです。
一般的な年収の目安として、単身者の場合は最低年収300万円が求められます。ただし、これはあくまで一般的な基準であり、実際には申請人の生活状況、資産状況、家族構成、在留資格のタイプによって最低金額は異なります。

また、扶養家族が1人増えるごとに、さらに70万円が必要となります。例えば、妻と子ども2人の家族の場合、年収は510万円が要件となります。
さらに、過去5年間の年収が安定している必要があります。1年でも年収300万円を下回る年度があれば、不許可となる可能性があります。ただし、コロナ感染症のような不可抗力の場合は、考慮されることもあります。

大企業やグローバル企業に勤務している場合は、収入の安定性が保証されているため、有利に働きます。逆に、個人事業主やフリーランスの生活は一般的に不安定であるため、確定申告書や事業計画書を提出することで、生活の安定性を証明しなければなりません。
仮に申請人の年収が300万円未満でも、配偶者の収入と合算することで年収要件をクリアできる場合があります。これは共働き世帯ならではのメリットです。
つまり、預貯金が少なくても、家族全員が現在および将来の収入で十分に生活できることを示すことで、審査がスムーズに進むことが考えられます。

貯金額を証明する資料

申請人の預金額を証明する書類は、以下の3種類があります。

・預金通帳のコピー

・ネットバンキングのスクリーンショット

・金融機関の預金残高証明書

残高が10万円以上の預貯金資料は、すべて提出することをお勧めします。

その他に提出するとよい資料

大きな財産を保持している場合は、その資料を提出することをお勧めします。これにより、生活の安定性を示すことができます。

不動産が自己所有であることの証明

自宅が自己所有であれば、売買契約書や登記事項証明書を添付することで、生活の安定性を証明します。持ち家をお持ちの方は、賃貸住宅に居住している方と比較して生活費が抑えられるため、年収300万円に達していなくても、許可される可能性があります。ただし、収入要件が大幅に下がるわけではありません。

また、住宅ローンの借入金額が大きく、金利が低い場合は、金融機関の申請人への信頼感が強いことを示します。このため、住宅ローン契約書のコピーも併せて提出することが望ましいです。
さらに、住宅ローンが完済済みの場合はより有利です。通常、住宅ローンは長期間の返済を要するため、完済していることは財力があることの証明となります。

自動車保持の証明

・自動車を所有していることは、経済的な安定の一要素として考慮されることがあります。

・自動車を所有していることを証明するために、車検証、自動車保険証書、自動車納税証明書などを提出します。

・特に自動車納税証明書は、自動車税の納付が確認できる証明書であるため、納税義務が果たされていることの証明にもなります。

まとめ

永住権の取得において、貯金の有無はそれほど重要ではありません。むしろ、預貯金よりも安定した年収の方がはるかに重視されます。
審査では、申請者が日本で経済的に自立し、生活保護に頼らず安定した生活を送れるかどうかが大きなポイントとなります。年収の目安は単身者で300万円以上であり、家族が増えるごとに必要な年収も増加しますが、何よりも安定した収入を得ていることが最も重要です。

また、貯金額や年収に加えて、自己所有の不動産や自動車を持っていることも審査において有利に働きます。
結局のところ、安定した収入を得て、余裕をもって、貯金を増やすことが永住権取得に向けた確実な方法だと言えるでしょう。